子供の病気

もし学校心臓健診で子どもの不整脈が見つかったら…(2ページ目)

小中学校の入学前後に行われる、心電図による学校心臓健診。このときに子どもの不整脈が見つかることがあります。症状がないことが多い不整脈ですが、運動や日常生活に支障はないか心配される親御さんも多いようです。様子見でよいものか、治療が必要なものか、不整脈の種類と特徴について解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

心房細動とは

心房が不規則に動いて起こる不整脈。子どもの場合はまれで、心電図で見ると、P波がなく、細かく不規則に振れる波、F波が見られます。不規則に心室に電気が伝わるために、心室の波であるQRS波が不規則に出現し、脈も早くて乱れています。治療は抗不整脈薬か電気的除細動です。

心房粗動とは

心房が規則的に動いて起こります。こちらも子どもではまれで、心電図で見ると、P波がなく、規則正しい鋸の歯のようなF波が見られます。規則正しいために、心室の拍動は規則正しく、F波が何個かたして1個QRS波が見られます。治療は抗不整脈薬か電気的除細動です。

房室ブロックとは

心房から心室への電気信号が伝わらない障害を「房室ブロック」と言います。房室ブロックの程度で第1度から第3度に分けられます。

■第1度房室ブロック
心房から心室への電気信号が伝わる時間(房室伝導時間)が延長している場合で、PR間隔が長くなっています。子どもに多く、心臓の基礎疾患がなく、運動でも高度の房室ブロックにならないものは治療は不要です。

■第2度房室ブロック
心房から心室への伝わる電気信号が時に途切れる場合で、P波の後にQRS波がある場合とない場合があります。

・1型(Wenckebach型)
PR間隔が徐々に長くなって、最後にQRS波がなくなり、再びQRS波が出てくる周期を繰り返します。子どもで見られ、心臓の基礎疾患がなく、運動でも高度の房室ブロックにならないものは治療は不要です。

・2型(Mobitz2型)
PR間隔は一定で、突然、QRS波が無くなります。いつQRS波がなくなるか不明ですので、心臓の精査が必要になります。というのもQRS波によって心室が収縮して、心臓のポンプ機能を維持しているからです。

■第3度(完全)房室ブロック
心房から心室までの伝導が伝わらずに、心房と心室が独立して拍動します。P波とQRS波がバラバラの状態です。そのために心室の拍動が少ない場合は、全身への血液量が少なくなり、意識消失、意識障害を起こします。これを、専門用語で「Adams-Stokes発作」と呼んでいます。Adams-Stokes発作があれば、ペースメーカーでの治療が必要になります。第3度(完全)房室ブロックは、子どもではSLEと言う膠原病の母親から生まれた子どもで見られ、先天性心疾患の術後、心筋炎などに見られます。

WPW症候群(Wolff-Parkinson-White症候群)とは

こちらは発見者の人名がついた不整脈ですが、正常の房室伝導経路とは別の経路であるKent束(バイパス)があるために、特徴的な心電図になります。

PR間隔が短くなり、Q波がみられず、デルタ波と呼ばれる波が出てきて、R波の立ち上がりが早く出てきます。別の経路から電気信号が伝わるために、発作性上室性頻拍を起こします。発作性上室性頻拍には治療を必要としますし、よく発作性上室性頻拍を起こす人には、Kent束を電気で焼切るカテーテルによる手術もあります。

この病気では、心房細動、心房粗動をおこしやすく、さらに、心室性頻拍、心室細動に起こして、突然死の原因になります。

QT延長症候群とは

心電図に、Q波の後に、T波が続いてできてきますが、このQ波とT波の間の時間が長いために起こる不整脈で、普段は、無症状です。しかし、失神や突然死の原因になる不整脈です。恐怖や驚き、緊張、怒りなどの精神的なストレスや過労や運動などの身体的ストレスに致死的な不整脈を発生しやすくなります。運動中に失神がある人は、運動を禁止します。

不整脈が見つかった場合は、詳しい検査で見極めることが最重要

上記のように、一言で不整脈といっても、そのまま様子見をして問題ないものから、早急に手術などの治療を行わなければ命に関わる可能性があるものまで、様々です。

小学校や中学校の入学時の心臓健診(心電図検診)では、学校生活を送る上で致死的な不整脈が出てこないかどうかを検査します。もしもこの段階で異常が見つかれば、2次検診として、医療機関で、運動を負荷した心電図、胸部X線、心臓超音波検査、1日中心電図を装着して後日解析するホルター心電図などで詳しい状態を検査します。

こうした検査の結果、様子見でよい不整脈かどうかを判断する必要がありますので、もし心電図検査で医療機関での2次検診と言われた場合は、まずは慌てすぎず、でも必ず医療機関を受診して診てもらうようにしましょう。
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