雑貨/ハンドクラフト・工芸

島根県・湯町窯のエッグベーカーで色々料理してみた

島根県・湯町窯の看板商品エッグベーカー。民芸の影響を受けた、手仕事の器です。耐熱性なので直火、オーブン、電子レンジもOK。これはもう、たまごに使うだけではもったいない気がします。そこで、たまご以外の色々なものを調理してみました。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド

エッグベーカーという器があります。その名の通り、たまごを調理するための器。
容器の中に生たまごを割り入れ、フタをして数分火にかけるだけで、ふわふわぷるぷるの目玉焼きができあがります。(焼きというか、正式には”目玉蒸し”という感じかな)。直火でもオーブンでも、電子レンジでも使える便利なしろもの。冬はストーブの上に乗せて温めるといい感じです。時間のない朝の食卓にも活躍します。たまごと一緒にベーコンや野菜、チーズなどを入れてアレンジすることも可能です。茶碗蒸しやプリンなどにも応用できます。

朝食にほんのり華やぎが!

朝食にほんのり華やぎが!


このエッグベーカーは、島根県の布志名焼・湯町窯のものです(ここと、同じく島根県の出西窯などでも見かけます)。ぴょこっと取っ手が付いて、ちょっと独特のかたちをした器。和食器ではないですね。不思議な無国籍感。

布志名焼は元々は江戸時代に始まった茶陶でしたが(湯町窯は大正11年に開窯)、昭和初期に柳宗悦やバーナード・リーチ、河井寛次郎などなどが訪ね、指導したことから民芸運動の影響を強く受けました。特に布志名焼は、バーナード・リーチの故郷イギリスで古来よりスリップウェアなどに使用されていたガレナ釉と同じような黄色い釉薬があり、リーチが興味を持って何度も訪れ、滞在していたので、リーチの影響を色濃く受けたピッチャーやコーヒーカップなど洋食器が多いのです。エッグベーカーもその中のひとつ。湯町窯ではもう50年以上造られているというベストセラー商品です。

私は関東育ちですが、そういえば子供の頃から、家にもこの器がありました。自分の親世代は民芸ブームに乗っかってた人たちなんでしょうかね。今年は仕事もあって何度かこの窯元を訪ねましたが、その度に作り手である福間さんがこのエッグベーカーをストーブに乗せて、たまごを作ってくれました(福間さん曰く、ストーブが一番おいしくできるのだそうです)。真夏でもお客さんにたまごをもてなすためにストーブが付いており、沢山のお客さんが来てしまって、ストーブの上がエッグベーカーでいっぱいになってることもありました。

パンがぎりぎり入るサイズ

パンがぎりぎり入るサイズ


さて、前置きが長くなりました。そもそもエッグベーカーだからたまごに使うものなんですが、もちろん実際たまごに相当便利な器なんですが、たまご専用っていうのももったいない気がして、それ以外にも何か使えないかな?、と色々試してみることにしました。

まずはオニオングラタンスープ。
スープ自体は鍋で作るのですが、最後の仕上げである「バゲットとチーズを乗せて、オーブンで香ばしく焼く」というときに、エッグベーカーを使いました。オーブンの調子が良くなくて、あまりカリッとした焦げ目ができなかったのですが、チーズがとろりと溶けて、良い感じに仕上がりました。オーブンにそのまま入れて、そのままテーブルに出せる、というのはなかなか面倒が減って良いです。一人分だけ作りたい、というときにも便利。器ごと温めるので、スープが冷めにくい、という利点もあります。大きさ的には、バゲットを輪切りにしたものがちょうど収まる感じです(斜め切りだとやや厳しい)。

シジミじゃなくて、あさりでもいいと思う

シジミじゃなくて、あさりでもいいと思う


次は島根つながり、同じ土地のものを食べてみよう、ってことで宍道湖のシジミを酒蒸ししてみました。宍道湖は湯町窯からもすぐ目と鼻の先。バーナード・リーチがこうやって食べていたかは分かりません。

砂を吐いたあとのシジミとお酒を器に入れて火にかけ、フタを閉め数分待つ。うちでは直火でやってみました。すると、お酒が沸騰したとき、フタがわずかに上がって中の汁が回りにじゃっと飛び散ります。ここちょっと注意。後で拭けばいいですけど、こればかりは仕方ないですかね。IHだとやや拭きやすいかな(IH調理も可能)。まあ、どっちにしろ飛び散りますが。しかしよく考えるとアルコールなので、火に直接かかるのはあまり良くないですね。(大抵アルコール分は飛んじゃってて、逆に火が消えますが)。直火にせずに、網に乗せてアルミホイルなどを下に敷くと、ある程度飛び散りを防げるかと思います。

果たして、酒蒸し自体はうまくできました。ホクホク温かくて、おいしい。最後に塩で味を整え、ネギを乗せます。ちょびっとおつまみを作って出すにはいいです。日本酒が合いますね。

ゆっくりじっくり煮込みます

ゆっくりじっくり煮込みます


おつまみシリーズで牡蠣のオイル煮にも挑戦。
これは、All About「男の料理」土屋さんのレシピを参考につくりました。「低温でじっくり煮る」という作業が、土物には向いているので、これはもしやカキベーカーとしても優秀かもしれない?!と睨みました。今回はちゃんと網に乗せ、遠火でじっくり温めました。温度を60℃くらいに保つのが良いそうです。沸騰はNG。土屋さんのレシピによると、材料もそれほど難しくなく、基本的には、牡蠣、塩、オリーブオイル、唐辛子があればなんとかなります。

おいしい!こちらはワインに合いそうです

おいしい!こちらはワインに合いそうです


できました。ぷりぷりの牡蠣。写真だと分かりにくいですが、簡単でかなりおいしく仕上がっています。そういえば、以前このエッグベーカーを使って、料理家のワタナベマキさんが、野菜のオイル煮というのを作っていましたっけ。オイル煮関係の様々に使えそうです。金属より熱の入り方がゆっくりなので、じわじわ煮込むには良さそうです。こちらもちょっとしたおつまみとして簡単に作れるのがありがたい。そのまま出せて、洗いものも少ないし。

実はここでカメラが壊れ、これだけ携帯カメラの画像です・・・

実はここでカメラが壊れ、これだけ携帯カメラの画像です・・・


さて、ここでそろそろ終わりにしようかと思っていたのですが、もう一つ、やってみたい料理をうっかり思いついてしまいました。バーニャカウダです。この器に似合いそうな料理ではないですか。ソースの材料を全部エッグベーカーに入れて、ゆるゆる温めるだけ!(本当はもっと複雑なレシピもあるかと)。今回も網の上で温めてみました。できあがったらそのままテーブルへ。このソースは、本来温めながら食べるのがいいようですが、陶器なので、幾分冷めにくいように思います。器の下にロウソクなど置けるようセッティングできたら、よりよいかもしれません。応用編で、チーズフォンデュなどもできそうですね。

一見同じに見えますが、少し大きさが違います。大は直径8.5cmくらい、小は6.5cm

左の写真、一見同じに見えますが、少し大きさが違います。大は直径8.5cmくらい、小は6.5cmくらい


湯町窯の器は、バーナード・リーチの影響を受けているため、全体的に料理の見た目も洋風な感じになりました。スペインとかイタリア、南仏料理などの雰囲気。そちら方面の器と組み合わせてもしっくりきます。魚介類や、トマト、唐辛子などビビッドな色合いが似合うように思います。ラタトゥイユや、イカスミ系の料理などもいい感じです。本当はエスカルゴとか作ったら、なかなかサマになるような気がします。

一人暮らしの方は、まずはこれ1個、あると何かと便利です。食器と調理道具を兼ねている。狭いワンルームでも場所を取らないし、一人分がさくっと作れる。あとは酒呑みにとってなかなか気が利く器ですね。ちょこっと何か食べたいとき、ちゃちゃっと温かいつまみが作れそうですね。
もちろん、朝ごはんをきちんと食べたい人にとっても、いい仕事をしてくれるエッグベーカーさんだと思います。

湯町窯
島根県松江市玉湯町湯町965
TEL 0852-62-0726

日本民藝館や各民藝館の売店、銀座たくみ備後屋などの民芸店、にほんばし島根館でも販売しています。



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