女性も自分のために購入するチョコビー
金色に輝く麦の穂がまぶしいサンクトガ―レンの看板。これがブルワリーの目印。
ここ数年、ヴァレンタインデーの贈り物として大人気を博しているのがこのチョコレートビールなのだ。甘いものが苦手という男性に、ビールファンという男性に、チョコレートとセットにして、女性も一緒に飲めるビールとして、一本はプレゼントに一本は自分への贈り物として……とさまざまな思いを込めたヴァレンタインデー・プレゼントとして爆発的に売れているという。
海外を含め、国内の地ビールメーカー数社がこの“チョコビー”を製造しているが、なかでもトップを走っているのが、神奈川県厚木にあるサンクトガーレン・ブルワリーだ。正式には「インペリアル・チョコレート・スタウト」という。どこからどうみても(飲んでも)ビター・チョコレートの風味なのだがチョコレートやカカオは一切加えていない。さて、どのように造られているのかを知るためにブルワリーを訪ねてみた。
チョコレートの風味を生み出すのは、チョコレート麦芽にある!
ここが地ビール工場。ここであのきれいな味わいのビールが生まれる。
「世界で一番最初に醸造免許を取得したのがスイスのサンクトガーレン修道院です。日本で地ビール製造が許される前から、僕たちはアメリカでビール造りを始めました。それが日本の地ビール解禁につながったんです。その“元祖”の思いを忘れないために、このサンクトガーレンという名前を使っています」と、優しい笑顔で答えてくれるのはサンクトガーレン有限会社代表取締役の岩本伸久さん。
ふむ、どうやらここサンクトガーレンは日本地ビールの歴史に深いかかわりがあるようだ。その詳細は後程。まずは、注目のチョコビーの造り方を拝見させていただこう。
扉を開けると一階すぐ奥が醸造所。きれいに掃除されタンクたちは輝いている。香ばしい香りが充満している。
「もとはインペリアル・スタウト(苦みの強い濃厚なビール)を造りたくて試行錯誤している中で、チョコレートのキャラクターが強く出る麦芽の個性に気が付き、チョコレートビールを造ってみようと考えました。ただ、チョコレート麦芽だけではなく、さまざまな麦芽をブレンドし、使用量も通常の黒ビールの2.5倍以上を使って“ボディーを上げる”ことで初めてこのコクのあるチョコレートらしい味わいになるんです」と岩本氏。
サンクトガーレンのかわいいグラスに注いでいただく。香ばしさ満点で期待値大!
「インペリアル・チョコレート・スタウトはアルコールが8.5~9パーセントです。非常に濃厚でワインのように熟成も可能。賞味期限は2年です」とのこと。
この個性あふれるビールは発売から順調に売り上げを伸ばしている。2006年初リリースで6000本が完売。翌年は発売して一瞬にして売り切れ。テレビや雑誌で紹介されると、同社HPのネット通販は注文が殺到しサーバー落ち。取扱いの百貨店高島屋バレンタインコーナーでは開店30分で完売。さらに翌年は開店前から購入希望者の行列ができるほどで、昨年は20,000本を完売した。
この人気は、味わいの目新しさと絶妙な発売タイミングをアドバイスした同社取締役の中川美希さんのPR手腕があった。それになによりその味わいに惚れ込むリピーターが多かったからだ。
こちらが原料の麦芽。通常の麦芽とチョコレート麦芽、などがすでにブレンドされている。
<NOTE>
チョコレート麦芽は、甘苦い味わい。香ばしくておいしいのがクリスタル麦芽だ。
インペリアル・スタウトとは、18世紀、ロシア皇帝に愛された濃厚でアルコール度数の高いスタウトのこと。