第5位『車イスで僕は空を飛ぶ』
まずは単発ドラマから。24時間テレビ『愛は地球を救う』内で放送のスペシャルドラマも歴史が長く、1980年スタートで33作目。基本的には24時間テレビ全体の雰囲気からはずれないもので、障害のある主人公が前向きに生きる姿を描きます。『家政婦のミタ』『純と愛』などかわった作品が多い遊川和彦が脚本を担当した09年の『にぃにのことを忘れないで』でも例年の路線を外していませんでした。ところが今年はかなり違います。チンピラ崩れの主人公ヤス(二宮和也)は事故で車イス生活に。定石では一度は絶望するが生きる希望を取り戻すというストーリーが展開されるはずだけどそうはなりません。母親(薬師丸ひろ子)は介護に耐えかねて失踪するし、同じような障害を持っているが前向きという本来の主人公的キャラの佐山(池松壮亮)は自殺。普通ならヤスを支える恋人になりそうな加藤久実(上戸彩)は凄惨な過去を語りだし、と周囲の人も様々な問題を抱えていることが明らかになっていきます。
みんなが弱者になりうる現代を描き、だから助けあおうというのがテーマなんでしょう。問題作でした。
『すいか』『マイボス・マイヒーロー』など異色作を制作する河野英裕プロデューサの作品。『妖怪人間ベム』映画版がこの年末年始に公開、また来年1月からの土曜21時枠『泣くな、はらちゃん』も準備中です。
第4位『リーガル・ハイ』
近年人気の刑事・事件ものですが、最大の人気作、『相棒』が「映画版2」あたりがピークだったようで、昨年から視聴率も下降気味。他の刑事ドラマでもヒット作が少なく曲がり角に来たようです。その中で見所が多かったのがフジテレビ系。シリーズもの以外の刑事ドラマでは最もヒットした『ストロベリーナイト』(映画版が1月末公開予定)、密室殺人にこだわった『鍵のかかった部屋』、弁護士が主人公で刑事事件も扱うが民事事件の方が多い『リーガル・ハイ』、入試の前日と当日の学校に舞台を絞り込んだ『高校入試』とミステリーが光りました。この中から原作なしのドラマオリジナルである『リーガル・ハイ』を4位に。
見所は訴訟で決して負けない弁護士を演じる堺雅人のしゃべりまくる怪演。常に微笑を絶やさないが、同時に微妙な喜怒哀楽を見せ、真意の探りがいがあります。
裏に流れるテーマは「正義とはなにか?」。毎回、普通とは違う視点から考えています。特に最後のエピソードで化学工場の公害を扱ったのは、あきらかに原発問題を意識したのでしょう。娯楽作の中で見せるジャーナリスティックな姿勢は貴重です。
脚本は『ゴンゾウ 伝説の刑事』『外事警察』などの古沢良太。低視聴率が逆に話題になった『鈴木先生』の映画版が正月明け1月12日から公開予定です。
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