結局、iPhoneケースはカバーかホルスターかに落ち着く
まだiPhoneが登場した当時は、こんなにもiPhoneが触られる対象ではありませんでした。まだTwitterには人がいませんでしたし、mixiのクライアントはダメダメでしたし、ケータイメールの送受信も不便だったせいか、基本は電話として、またはiPodとして使っていて、いざという時にインターネットが使える端末、といった使われ方が主流だったのです。だからこそ、ジョークアプリなんかも流行出来たのだけど、今や、iPhoneを始めスマートフォンは、道を歩いていても使うような端末になっています。となると、ケースの意味も変わってきます。基本、ずーっと使ってるのですから、ケースに入れている意味があまりありません。歩きながら、電車で立った状態で、使う事を考えれば、背面カバーと画面保護シートの組み合わせがメインになるのは当然の事でしょう。今や、背面カバーは、何の説明もなく「iPhoneケース」と呼ばれたりもしています。そして、裏面の柄や色、後は素材くらいしか選択の決め手がありません。実は細かい事を言えば、同じ背面カバーでも、持ち心地が良いもの悪いもの、工作精度が高いもの、いい加減なもの、素材の品質が低いもの高いものなど、色々と見るべきポイントはあるのですが、そこは日常的に身に付けて使うものですから、そういった品質以前に、デザインや柄が気に入るかどうかになります。それはそれで、ここまでiPhoneが普及した以上、しょうがない現実です。また、そういう現実だからこそ、今回紹介する、バード電子の「錆シリーズ」や、Simplismの「次元」シリーズのような、こだわりの製品も登場出来たのだと思うのです。
一方で、普段、iPhoneをどこに収納しておくか、という問題もあります。冬場ならば、ポケットは大きいし多いので、どこにでも身に付けられますが、夏場はカバンに入れるしかない場合もあります。そうでなくても、ポケットに入れるのは服の形が崩れたりもして、あまり良い事ではありません。ということで、ホルスターのように、iPhoneを身に付けるためのケース(もちろんカバンなどに装着するのも同じですね)にも人気が集まっています。しかも、こちらのトレンドは、背面カバーを付けた状態のiPhoneが入るタイプですね。ただ、このタイプは、背面カバーと比べてデザインもきちんと行わないといけないし、縫製や機能もしっかりと考えなければならないので、より「名品」が少ない世界です。今回紹介するLEDの「iPHONE CASE +KEY WEAR」は、前にガイド記事でiPhone4S用ケースベスト5で第一位に輝いたバード電子の「iPhoneラジオケース」以来の、ホルスタータイプの名作だと思います。
バード電子の「錆シリーズ」が切り開く新しい可能性
バード電子と島製作所のコラボレーションによって生まれた、「錆シリーズ」は、錆びた金属の写真をiPhone用の背面カバーにプリントしたもの。これを装着したiPhone5は、遠目で見ると、錆びた板に見えます。錆びた金属は、通常、使い物になりません。酸化だし、劣化です。最初は、iPhone5発売直前に、「みんなはiPhone5を使うかも知れないが、僕はもはや錆びついたiPhone4Sを使うよ」といったキャッチフレーズと共に登場して、そのアイロニーと、実際のカバーにプリントされた錆のカッコ良さに魅せられたユーザーがこぞって購入、あっという間に完売しました。最新のデジタルデバイスが錆びている、という面白さは、どこかで電子機器と対等に付き合いたいと考えている人々の心をくすぐるものがあったのだと思います。ガイド納富もすぐに飛びついた一人です。カバーは、使い勝手の良さと印刷が簡単に剥がれないものから選ばれているので、背面カバーとしては使いやすいというか、持っていて不快感の無い、手に馴染みやすいカバーだと思います。もちろん、既成のカバーですし、とても優れているという訳ではありませんが、普通に問題なく使えます。また、ガイド納富が既に3ヶ月程度、鍵などと一緒にポケットに入れて使っていますが、印刷が剥がれる感じは全くありません。爪で強く擦っても何ともないので、かなりしっかりと印刷されている感じです。それこそ、見た感じは、本当の錆びているかのようです。
iPhone5用になって、ノウハウが増えたせいか、出来が更に良くなっています。縦長い形状が錆に合ったのかも知れません。また、どのように写真を撮れば、それがよりリアルにプリント出来るかといった研究もなされたのでしょう。もはや「錆」がアートのように、でも、古びたモノであるというムードもたっぷりと湛えながら、iPhoneカバーとして仕上がっています。本物の錆だと、触るのも躊躇するほどの立派な錆ですが、そこは写真なので大丈夫。錆の良い所だけをカバーとして日常生活に取り入れる事が出来るのです。メメント・モリ的と言うか、常に進行していく錆の侵食への恐怖と、錆の美しさと、侵食される快感と、錆びつかないぜ、という思いを、かつてニール・ヤングが「Rust Never Sleeps」というパンクロックなアルバムで表現しましたが、この錆シリーズからも、そんなロックな思いが感じられます。カバーデザインの極北とも言える「錆シリーズ」の面白さは、是非手に取って感じて欲しいです。