今回は、将来的な住宅需要の先細りに対応するため、最近の住宅事業者は様々な事業に進出しているというお話。大手のハウスメーカーを例に取ると海外で住宅を販売するケースをはじめ、高齢者介護や福祉、さらには保育施設の建設などを行っているケースもあります。ハウスメーカーについて理解を深めるためには良い話題ですので、少し詳しくご紹介したいと思います。

大和ハウスグループによる住宅型有料老人ホーム

インテリジェンストイレ

「インテリジェンストイレ2」。尿検査や体重、血圧の測定ができ、体調のデータを保存・管理できる(クリックすると拡大します)

まず最初は、高齢者向け事業について。先日、大和ハウス工業のグループ会社が施工した有料老人ホーム「ネオ・サミット茅ヶ崎」(神奈川県茅ヶ崎市、鉄筋コンクリート造3階建て)を見学してきましたので、ここでご紹介しようと思います。

大和ハウスのグループ会社「寿恵会」が運営やサービス提供を担当し、アクティブシニアの方々向けの一般居室60室、介護を必要とされる方向けの介護室50室で構成されています。今後、介護付き有料老人ホームとしての手続きを進めるそうです。

いわゆる元気なお年寄りをメインに入居者を想定していますから、音楽会や講演会、サークル活動など、施設内での生活を快適におくれるよう多目的ホールや娯楽施設、大浴場など様々な仕掛けが用意されているのが特徴です。

さて、この有料老人ホームは「住宅型」という位置づけです。それはわかりやすく説明すると、大和ハウスがこれまでの住宅供給で培ってきた住宅のノウハウを反省させた施設であるということです。その代表的な事例となるのが、「インテリジェンストイレ2(正確にはローマ数字)」と呼ばれるもの。

一般居室

「ネオ・サミット茅ヶ崎」の一般居室の様子。高齢者とはいえ健常な方を対象とした居室であるため、まるで高級マンションのようなしつらえだ(クリックすると拡大します)

これは、トイレメーカーと共同開発したもので、トイレで用を足すだけで体調管理(尿検査や体重、血圧などをチェック)ができ、そのデータも蓄積できるという優れものです。大和ハウスが供給している戸建て住宅のほか、マンションなどにも採用されています。

建物や各居室の仕様にもこれまでの戸建て住宅やマンションのノウハウが盛り込まれています。まず、全体の雰囲気として「介護施設」を感じさせない造りとなっています。実は、この点は非常に重要なポイントで、単なる建設会社による施設だと、どうしても介護施設臭さが漂ってしまい、住宅という雰囲気が感じられないものなのです。

手すりの設置や段差を解消したバリアフリー設計など、高齢者の方々が安心・快適に生活できる配慮も十分に取り入れられていました。一般居室はスタッフルームにつながるコールボタンが各所に用いられているほかは、ほぼ通常のマンションのようなタイプです。

一方、介護居室には介護専用ベッドなどを備え、介護される側だけでなく、介護する側にも配慮したタイプとなっていました。実は、この介護する側の使い勝手に配慮するというのも、ハウスメーカーならではの提案やノウハウが見られる点です。

環境や防災面の配慮も徹底

発電機

屋上に設置されている発電機。東海地震での津波被害を想定した防災設備の一つ(クリックすると拡大します)

このほか、この施設の特徴は環境や防災面での配慮が盛り込まれていること。環境への配慮では太陽光発電システム(30kw)の設置やLED照明、全室の窓にペアガラスが採用されています。さらに屋上には、ヒートアイランド現象防止のために屋上緑化も行われていました。

防災面では、震度6クラスの地震に耐えられるRC耐震構造であることに加え、地上から屋上までスロープを設け、施設の居住者だけでなく周辺の住民も避難できるような設計にもなっています。特徴的なのが、屋上に設置されている「非常用発電機」の存在。

実は「ネオ・サミット茅ヶ崎」は海岸からほど近い場所に立地しています。東日本大震災では、仮に非常用発電機があったとしても1階に設置されていて津波で使用できなかったという苦い経験がありましたが、この施設ではそうした教訓を生かした建物でもあるのです。

ここまで、ハウスメーカーの高齢者向け事業の事例として大和ハウスの取り組みを見てきました。次のページでは、子育て支援事業の事例としてミサワホームの取り組みをご紹介します。