―――心臓病や血管病の観点をふくめて
京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授が2012年度のノーベル医学・生理学賞を受賞されることが決定しました。まもなく授賞式です。
iPS細胞(induced Pleuripotent Stem cell 人工多能性幹細胞)とは
iPS細胞の姿
この受賞決定は患者さんや社会にとって素晴らしいことと思います。個人的にもかつて同じ大学で仕事をしたもののひとりとして心からうれしく、誇らしく思います。受賞決定の興奮さめやらぬ翌日、朝刊の一面を見たとき涙を抑えることができませんでした。同じノーベル賞でも海外の先生が取られるのとはそのご苦労も喜びもちがうからです。
すでにさまざまなメディア等でiPS細胞の内容はある程度ご存じかと思いますが、本論に入るまえに、この受賞の意義を少し述べたく思います。
日本の現状
研究体制でアメリカは今も日本を凌駕しています
もう一点、日本の研究環境が遅れているのは旧態依然としたヒエラルキー制度です。教授の意のままに動くだけの研究者、これではいくら若い柔軟な頭脳からでも自由な発想が生まれにくいのです。私の知っている研究室は自由な雰囲気のところが多かったのですが、世間一般的にはそうとは限らないようです。早い時期から独立して厳しくてものびのびとアイデアがだせる、そうした構造が欧米には昔からありました。山中先生は現在のiPS細胞研究所ではこの仕組みを導入しておられるのが心強いです。しかしそれでも3年とか5年の期限付きの雇用の方が多く、やはり研究体制として欧米に遅れているのです。
山中伸弥先生
実際、iPS細胞研究の土台になった初期の研究はわずか若干名の研究チームで、独創性と情熱と若さだけを武器にして進められたと言われます。欧米の何十分の1、あるいは何百分の1という小さいチームでした。ヒトiPS細胞がチーム山中によってできたとき、チーム山中対チーム全米の戦いで大変厳しいと言われたものです。現在のiPS細胞研究所(CiRA)は国や京都大学の支援のもと、世界水準と言われる組織になりつつあるようですが、それまでの道のりは大変厳しかったのです。
この機会に日本
事業仕分けの世界1と世界2の議論
有名になった「どうしてNo.1を目指すのですか?No.2ではいけないのですか?」という蓮舫議員の議論は、貧相な環境でも高い志をもって日夜努力を続ける日本の若い優秀な研究者に対してあまりにも配慮のない、酷い仕打ちでした。資源小国である日本がいきる道は頭脳立国しかないことを考えれば、それでなくても少なすぎると言われる研究予算を削減するなどは国の将来を預かる政治家としてあってはならないことなのです。このことは石油も鉄も水もない、しかしやる気のある頭脳だけは豊富なカリフォルニアがアメリカの産業の中心地になりつつあることからも明らかです。スポーツの世界に例えれば、オリンピックの金メダルを目指して日夜猛練習に耐えている選手に、君は銀メダルで良い、ほどほどに頑張りたまえというのと同じです。そんな愚かなことがまかり通る国を見たことがありません。
京都大学iPS細胞研究所
(続く)