石川尚のWAKUWAKUプレスレポート#50
モダニズムを住む/住宅・家具・デザイン
Ma邸/東京/2階主寝室より中庭を見る/1957年/GAphotographers撮影:二川幸夫(引用:建築家「坂倉準三」展 リーフレット) |
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「緑深い渓谷にほど近い都内の住宅地にたてられた一軒の家。パリ帰りの新鋭、建築家・坂倉準三(1901-1969)が帰国して最初に手がけた作品でした。「住宅は建築の本質的なものを全部もっている……」と本人が語る通り、彼の建築の魅力である、敷地を活かす建物の配置、プロポーションや細部の造形に卓越した感覚、技術への深い理解は、その後も続く住宅への取り組みにおいて凝縮したかたちで見られます。さらにそれらの現代住宅にふさわしい新しい家具を考案し続け、その日本の伝統美と機能との巧みな融合には、ル・コルビュジエのもとで共にモダニズムの理論の実践に励んだシュルロット・ペリアンの影響がうかがわれます。
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(引用:建築家「坂倉準三」展 リーフレット)
日本の近代建築デザインの礎を築いた建築家のひとり:坂倉準三、一建築家として社会に多様なデザインの可能性を見いだした彼の全貌をひも解く展覧会が、神奈川近代美術館(第一部/2009年5月30日~9月6日)、汐留ミュージアム(第2部/2009年7月4日~9月27日)にて開催された。
とくに第2部では、大扉の原寸大再現の試み、椅子の意匠の変遷、貴重な図面、写真、模型、映像など多くの資料を通して坂倉準三の『住宅・家具・デザイン』の仕事に焦点をあてた貴重な展覧会、ファニチャーイストにとっては涙モノの展覧会だ。
坂倉デザインの原点を探る展覧会
私的事情ながら予定を遥かに遅れて展覧会終盤の取材となったが、まずは学芸員:大村さんに本展覧会についてお聞きした。
・本展覧会の内容は?
『坂倉準三は、日本デザインの黎明期に一建築家ではなく、クリエイターとして活躍しました。本展覧会は、ル・コルビジェのもとで修行した時代から晩年までの貴重な建築・家具図面や建築復元模型、原寸大(実物大)建具、家具、国際展の空間再現など、坂倉建築事務所の展示レイアウトによって坂倉準三のDNAがある展示空間を表現しています。
また展覧会企画を進める中でお会いした静岡島田市の元市長のお話やニューヨーク近代美術館に眠っていたコンペ資料等、坂倉準三の家具への取組みも今回明かになり、あらためて坂倉デザインの原点を探る展覧会となりました。』
・大村さんオススメの展示品は?
『う~ン、坂倉準三の手帳かな。展示スペース最後にあります。手帳に描かれたスケッチが印象的です。』
展覧会場を拝見する前にかなり充実したお話を大村さんに伺った。思わずそのまま帰ってしまう程盛り上がった。とくに家具に関する内容や企画過程でのエピソードなど実にリアル……益々実際の展覧会風景が気になる。とくに実物展示の原寸大建具や椅子・テーブルなどの「家具」の存在に興味津々。今回の取材ではこれら家具を中心に、汐留ミュージアムのご協力のもと前・中・後編3部作でこの展覧会の様子をご紹介したい。
では、早速会場へ!!
JR新橋駅から歩くこと5~6分。汐留オフィスエリアにあるパナソニック電工東京本社ビル、汐留ミュージアムはここの4F。大ポスターのあるミュージアムエントランスから展覧会場へ |
人目をひく展覧会大ポスターがエントランス右に、正面には坂倉準三のポートレイト。
ここから展覧会空間がはじまる。
晩年の坂倉準三。「準三の眼は薄いグレー色を帯びていた。言葉少なく、決して雄弁ではなかったが、その眼は鋭く、そこからすべての情熱を感じ取ることができた。」(坂倉竹之助 / 引用:「建築家坂倉準三」展覧会図録「建築家坂倉準三」,124p) |
第1章「東京とパリ、伝統とモダンの間で」の会場風景を次のページでご紹介します。