坂倉準三 「椅子から都市デザインまで」
最後の展示セクション5 ……「椅子から都市デザインまで」がある。
いきなりカラフルで有機的なフォルムの椅子、通称:「めがね椅子」が登場……どうしても「椅子」が出現するとメロメロしてくる。
真正面からとらえた「大扉」右下から上2段面、左2列目最下段の窓にターンバックルの細い線がみえる。 (写真をクリックすると赤い椅子正面が拡大されます。) |
この椅子は、ホテル三愛(1964年竣工、現・札幌パークホテル)のロビーにためにデザインされたものだ。素材に当時国内家具製造分野では開発間もない硬質発泡樹脂を採用し、三次元曲面の美しく量感のある椅子が生まれた。人が座ると両脇にポッカ~ンと穴が空いて、なかなか「愛嬌のある顔」の椅子、坂倉準三の人間味あふれる造形と華やかな色使いがホテルのロビーという公的空間に温かみのある彩りを与えたにちがいない。
同様に三次元曲面の美しく量感のある作品が紹介されている。
鎌倉の七里ケ浜近くにある等身大の白いモニュメントがそれだ。
大写しにされたモニュメント写真と学芸員:大村さんお気に入りの(坂倉準三が使用していた)手帳。そこには、自筆で描かれた貴重なデザイン過程のアイデアやスケッチがある。 (写真をクリックすると坂倉の手帳が拡大されます。) |
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1951年に坂倉準三によりデザインされた哲学者、西田幾太郎の碑である。(中略)坂倉準三はデザイン過程のドローイングに修正を上描きしながらスタッフとともに検討を重ねるスタイルをとっていた為、そのスケッチはほとんど残されていない。しかしこの碑は日常使われていた手帳に基礎の構造まで示したスケッチが残さている。(中略)坂倉は家具の曲面をデザインする際に試作を重ね、時には削りすぎてやり直すこともしばしばあったという。また家具から都市までそのデザインの随所に見うけれれる優美な曲線はさまざまな半径の円弧を巧みに組み合わせて生み出されたものであった。
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(引用:「建築家坂倉準三」展覧会図録,126p)
実はこのようなモニュメントまで(坂倉が)手がけていたとは知らなかったが、温かみのある美しく優しい曲線は、いままで登場した椅子や家具にある豊かなラインと同様、まさに坂倉準三の造形美を象徴的に表している。
「椅子から都市デザインまで」……坂倉準三の一貫した造形美。(引用:「建築家坂倉準三」展覧会図録,153p) (写真をクリックすると全体が拡大されます。) |
この一貫した曲線の造形美は、椅子など「家具」から東京日仏学院(1951年)、新宿西口ターミナル広場(1966年)など「都市」のデザインまで見受けられる。 また、1953年ミラノ・トリエンナーレ展へ公式参加する準備の為に設立された「国際デザインコミッティー」に顧問として参加し、建築家からデザイナー、アーティスト、評論家など幅広いコミュニケーションとネットワークの場を残している。ちなみに「グッドデザイン」運動を推進し、実現した(Gマーク)のも「国際デザインコミッティー」である。 ル・コルビュジエに学び、戦後復興する日本の住まい(住宅・家具)や都市つくりに大きく影響を与えた坂倉準三、興味深いことに自邸はつくらず生涯仮住まいだったとのこと。 常に実験を繰り返し、真摯な眼差しと使い手、住まい手、作り手と深い信頼関係で作り残してきた坂倉準三のデザイン。機能主義、経済主義、効率主義で製造され、使い捨てが当たり前の現代社会において、時代を超え存在する手作り感、表情、そして優美な坂倉デザインの意味を感じてやまないのである。 …………………………………………………………………………………………… ■今回の関連リンク →汐留ミュージアム
→神奈川近代美術館鎌倉館
→【保存板】『クリエイターズ』展
→『坂倉準三』展 (前編)
→『坂倉準三』展 (中編)
■建築家「坂倉準三」/モダニズムを住むー住宅、家具、デザイン展
■会場:パナソニック電工 汐留ミュージアム
■会期:2009年7月4日~9月27日
※ 取材協力:パナソニック電工 汐留ミュージアム
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