AMGは熟成を感じさせるまろやかさ
イタリーはフローレンスで、国際試乗会が開催された。CLSクラスは、第1世代から続けて、この地を初試乗会の舞台に選んでいる。バリバリのドイツ車、なのだけれども、発表の舞台は芸術の都/フィレンツェ。CLSクラスのコンセプトが感覚的に理解できる。まずは、CLS63AMGから試してみた。
第一印象は、”ずいぶんまろやかになったなぁ”だった。CLS63サルーンに初めて乗ったときには、けっこうヤンチャなイメージが強かったものだが、その時の過激だった印象がかなり薄まっていたのだ。アシ回りの動きには落ち着きがあったし、エンジンの中高回転域における精緻なフィールには、はやくも熟成を感じる。
特にエンジンが素晴らしい。ノーマルのV8に比べて、明らかに4~5000回転域におけるピックアップや回転フィールが心地よく、積極的に回そうと思うエンジンになっている。
もちろん、パワーフィールは十二分。しかも、勢いを怒りのようにまき散らすような類の加速ではなかった。シューティングブレークという貴族性キャラクターに見合った、速いけれども洗練されたダッシュをみせる。高速クルージングでの安定感も、サルーン以上かもしれない。
仕事から趣味まで、グランドツーリングのパートナーとして幅広く活用できそう。こうなってくると、4マチックのディーゼル版CLSシューティングブレークAMGも欲しくなってくる。
反面、ワインディングロードに入って、ドライブトレインとサスセットのモードダイヤルをS+にセットしてみても、さほど過激になってくれない。AMGモデルとして、やっぱりちょっと物足りない気もする。できればコンフォートモードの次のS(この性格がイマイチはっきりしない)を省いてそこにS+をおき、さらにその上にもうひとつ、スパルタンなモードを設定して欲しい。
サルーンのパフォーマンスとしっとりしたライドフィール
550は従来の5.5Lからダウンサイジングされた、最高出力408psの最新4.7Lを搭載。350は306psの3.5LV6を積む。ミッションは7ATとなる。フロントマスクはクーぺを踏襲、71個のLEDを使ったLEDハイパフォーマンスヘッドライトが特徴的
ただ、サルーンのときと同様に、やはり550の位置づけの中途半端さが気になってしまう。スタイルと機能性だけで選ぶなら、350で十分だ。重量バランスもよく、頭も軽やかに動いて、街中の普段乗りから高速クルージングまで、オールマイティに重宝するはず。
550には逆に、もっと“おしとやか”な走りのフィールが欲しいところ。確かにAMGに比べれば、どっしりと構えて、落ち着きのあるオトナの速さをみせてくれてはいたが、そのキャラを、思い切ってもう一段、強めてみてはどうだろう。その昔の、メルセデスの泰然としたライドフィールを、現代的な方法でもっと積極的に表現して欲しいと思う。そうして初めて、550を積極的に選べるようになると思うのだが……。
もっとも、日本仕様の550は4マチックのみとなった。これまでの例から想像するに、2駆よりも穏やかな乗り味になっている可能性が高い。日本での試乗が楽しみである。