破産の場合は、まず裁判所に届け出を
破産の場合でも、給料などがちゃんと支払われる場合もある
事業を清算する破産手続では、手続を申し立てる前に従業員を全員解雇していることが通常です。このようなケースでは、未払い給料等の労働債権を持つ従業員は、基本的にはその債権を裁判所に届け出て、破産管財人からの支払いを待つことになります。
かつて労働債権は、破産手続において全て「優先的破産債権」とされていて、一般の債権よりは優先して配当されるものの、税金や社会保険料等といった「財団債権」が支払われた後に配当されるにすぎませんでした。そのため、税金を長期にわたって滞納している等、財務状況が著しく悪化している倒産企業では、労働債権にすら配当が全くないこともしばしばありました。
しかし破産法が改正され、平成17年1月から施行されました。現在では労働債権のうち、
1. 破産手続開始前3か月間の給料(破産法149条1項)
2. 退職前3か月間の給料の総額に相当する退職金(破産法149条2項)
については「財団債権」に格上げされ、それ以外が「優先的破産債権」とされています。1の「給料」については、名目にかかわらず、労働の対価として支払われる全てのものを指すと考えられていますので、残業手当や賞与も含まれます。
見解の対立があるのが、解雇予告手当です。企業が従業員を解雇する場合には30日前にその予告をするのが原則ですが、倒産企業では混乱を避けるために即時解雇を言い渡すことが殆どです。
その場合、従業員の平均賃金の30日分を「解雇予告手当」として支払わなければなりません。この解雇予告手当は、労働基準法で特に定められた債権のため、1の給料等には含まれない(つまり、優先的破産債権)としている裁判所が多いようです。
ただ、配当の優先順位の問題以前に、解雇予告手当の存在そのものを失念したまま破産手続を申し立てている企業が見受けられます。従業員側でも解雇予告手当の債権届出を忘れないようにしましょう。
このように破産手続では、法改正により一定範囲の給料、賞与及び退職金について財団債権として取り扱われるようになり、破産管財人から早期に全額の支払いを受けられる可能性が以前よりも高くなりました。
次のページでは、民事再生の場合について、解説します。