都心の狭小地でエコハウスを実践

小林邸

目黒区の住宅密集地に建つ小林邸。

太陽光発電など、自宅で発電したいという機運はますます高まっています。ただし面積の狭い都市型の住宅では、自然エネルギー利用する発電は難しいことも事実。そこでエコハウスの進化に取り組む建築デザイナー・小林清泰さん(KENOS)のご自宅(目黒区)を訪ねました。

小林さん

建築デザイナー・小林清泰さん(KENOS代表)。一戸建住宅から大型のショッピングセンター、コンビニまで多彩な建築をデザインされています。

小林邸が完成したのは今から約20年前。住宅密集地にありながら、自然光をふんだんに取り込む設計です。早くからエコ建築に着目していた小林さんは、ショッピングセンターやコンビニのエコデザインを提案する一方、2005年、自宅に「エネファーム」を導入しました。エネファームは都市ガス等を利用した燃料電池によって、発電と共にお湯をつくる装置です。

燃料電池の仕組みはちょっと複雑です。都市ガス等から水素をとりだし、それを空気中の酸素と化学反応させて発電します。その際に出る熱でお湯を沸かし、貯湯タンクに貯めて給湯に利用します。つまり電気を作ると共に、お湯もできるのが特徴です。(詳しくはAll About「住宅設備」ガイド:岩間 光佐子さんのインタビューを御覧ください)

小林さんがエネファームの導入に踏み切ったのは、まず二酸化炭素の排出量が少ないこと。それとエネルギーの利用効率が高いことです。二酸化炭素は水素を取り出す時に若干発生しますが、電力会社の電気を使うことと比べるとかなり抑えられます。また発電所の電力は、家庭で使用されるまでに排熱ロスや送電ロスによって6割以上の1次エネルギーが無駄になるといわれます。一方エネファームの場合、都市ガスのエネルギーは約8割も利用されるのです。
エネファーム

小林邸のエネファーム

ただし発電量は最大750W~1000Wほど(機種によって異なる)で、一般家庭の使用電力には足りません(不足分は電力会社の電気を利用します)。また太陽光や風など自然エネルギーでないこともあり「売電」には対応していませんでした。しかし太陽光発電とエネファームを組み合わせた「W発電」によって、現在は売電も可能になっています。

パネル

エネファームのコントロールパネル。消費電力や発電量などをリアルタイムで確認できます。

実際の使い心地を小林さんにうかがうと「エネファームを導入してから、電力会社から買う電力はだいぶ減りました。5割~6割を発電している計算になり光熱費も抑えられました。何よりもうれしいのは二酸化炭素の排出量を減らしていることです。導入から7年でかなりの量を削減できました」。

一方、不便な点もあります。「実際にエネファームを使ってみて分かったのは給湯能力の高さです。季節によって能力は異なりますが、水素と酸素の化学反応で生じた大量の熱を利用してお湯を沸かします。家庭で使うエネルギーの4割近くは給湯で消費されるといわれますから、エネファームによって大幅にエネルギーを節約できることが分かります。ただし不便な点は発電しないとお湯がつくれない事です。例えば、深夜にお湯を貯めたい思っても、電力消費量の少ない時間帯はお湯をつくれないこともあります」(お湯切れに備えエネファームにはバックアップ用のガス給湯器がついています)。

東芝

東芝が昨年発売した自立運転機能付き「エネファーム」。

今までにない「使い方の工夫」を求められるものの、東日本大震災を機に改めてエネファームの価値を感じたそうです。震災後に政府の節電要請があった際も、自家発電の割合の大きい小林家では、ほぼ普段通りの生活を続けられました。エネファームの普及率がもっと高まれば、都市部でも一般家庭の消費電力(電力会社分の)を抑えられ、ピークカットにも貢献出来るでしょう。

また停電時や計画停電の際に、自家発電を続けられる機種も新登場しました。従来のエネファームは運転に外部電源を必要としたため、停電時の運転はできませんでした。東芝の自立運転機能付き「エネファーム」は、最大700Wの電力を専用コンセントから給電できるので、停電時もパソコンやテレビ、スタンドなどが使え、給湯も続けられます。またパナソニックは2013年4月から200万円を切る新型を発売するそうです。

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