映画監督・押井守
~オススメの作品「インセンス」~

■「イノセンス」作品概要:
テクノロジーの進歩により電脳化、身体の機械化が進んだ2032年東京。社会には人・サイボーグ(機械化人間)・ロボット(人形)が共存していた。

ある日、少女型の愛玩用アンドロイド・ハダリが原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺するという事件が発生した。事件の不自然さに政府直属の対テロ犯罪機関・公安九課が動く。

そこに属する刑事バトーは、脳以外は全て造り物のサイボーグ。彼は相棒のトグサと共に捜査に向かい、謎のハッカーの攻撃に苦しみながらも事件の核心に迫るのだった。

■主なキャスト:
バトー(大塚明夫)、トグサ(山寺宏一)、草薙素子(田中敦子)

■押井守監督を好きな理由:

第一に、押井監督の卓越した才能・強烈な作家性・アニメと実写を両方作ってきたことで培った、映像表現に対する造詣の深さ・言葉のセンスなどです。

現在、ハリウッド的な製作システムで量産される無個性で作家性の見えない陳腐な映画が大半を占める中、商業ベースに呑み込まれず、自身の追及する表現の形を常に模索し続ける姿に私は敬意を抱きます。

■「イノセンス」の好きなシーン:

択捉での祭り。終盤バトーが少女に怒りをぶつける場面。ラストの犬を抱くバトー、人形を抱くトグサの娘、その娘を抱くトグサの視線がシンボリックに交錯するカット。

■「イノセンス」オススメの理由:
商業ベースの作品には一般的にエンタテイメント的な分かりやすさ、1度の鑑賞で完結する消費性が暗に求められるところがあって、それはそれで映画のひとつの形ではあります。そして押井作品は正にその対極に位置しています。

作品中のあらゆるディテールに、押井的な記号が付随し、それらは作品の背後で場面内の間(ま)を、台詞の行間で奥行きを、挿入曲の歌詞と映像的な演出に同調を、多重かつ象徴的に彩ります。

そのため、彼の作品にはストーリーの表層下に膨大な情報量が見え隠れし、ある種の難解さとなります。

しかし、このような表現法は他方作品の世界観に厚みを加え、テーマを深化させる機能を果たし、一見さんお断り的な反面、深く鑑賞しようとする者には観る度に新たな発見や問いかけを内包します。

そして本作は彼の追及してきた世界観・テーマが最も円熟し開花した作品です。その他作品の世界観を象徴する挿入曲「傀儡謡」の幻想的で荘厳なコーラスは圧巻で、2人の偉大な声優大塚明夫、山寺宏一両氏の掛け合いも見所です。




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