カルチノイド=がんのようなもの!?
カルチノイドは、英語では、carcinoidと書きます。がんのことをcarcinomaと言うのですが、このことから予想されるようにがんに似た性質を持つ腫瘍です。良性腫瘍ではなく悪性腫瘍であり、がんと同様、いろいろな臓器に発生するのですが、今回は「肺カルチノイド」であったと報道されています。あまり、聞き慣れないという方も多いと思いますが、今までの研究によれば、肺の悪性腫瘍のうち、約1%しかないという比較的まれな疾患でもあります。
二つのカルチノイド
カルチノイドは、一般的には悪性度が低いと考えられています。実際、がんの進展もゆっくりの場合があり、長期生存が期待できるものも多く、これらは定型カルチノイド(Typical Carcinoid)と呼ばれています。一方、低悪性度と考えられているカルチノイドでも、比較的早く病状が進行し、治療が困難なものがありますが、これらは、非定型カルチノイド(Atypical Carcinoid)と呼ばれています。定型か非定型かは、細胞の一部を採取し(生検)、組織を顕微鏡で観察し診断されます。頻度的には定型カルチノイドの方が多く見られます。
肺カルチノイドの初期症状
肺カルチノイドのうち、末梢にできたものは症状が出づらいのが特徴です。健康診断などで胸部レントゲンやCT検査を行い発見される例が多いのが現状です。
一方、肺の末梢側にできた場合には、ほとんど症状が現れず、健康診断やほかの病気で撮影した胸部レントゲン写真やCTなどで偶然発見されるケースが多いです。
カルチノイドの治療
カルチノイドもがんと同様、手術、放射線治療、抗がん剤治療を組み合わせて行います。ただ、症例数が多くないこともあり、まだまだ治療法には研究の余地が残されています。
ただ、腫瘍ですので手術がメインとなりますが、低悪性度ということも考慮し、転移が見られない症例では、肺の一部を解剖学的領域単位で切除する区域切除など縮小手術が盛んに行われるようになってきています。
転移や浸潤が激しく手術が困難な場合には、化学療法や放射線療法をメインとしますが、とくに非定型カルチノイドについては、治療の成績はまだまだ満足いくものではありません。これからの研究が待たれる分野といえるでしょう。
金子さんの詳しい病状はわかりませんが、1年ほどの間に急速に症状が変化していることから、非定型カルチノイドだったのでは、と考えられます。闘病中も、それは表に出さず、お仕事も続けられていたようです。ご冥福をお祈りするとともに、検査や治療などさらなる医学の進歩を待ちたいと思います。