「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」のお菓子は、形や見た目の斬新なものも多いのですが、フィリップ・コンティチーニ氏曰く、全てのお菓子は、形ありきではなく、味からスタートしているとおっしゃいます。テシエ氏と同じく1960年代生まれのコンティチーニ氏もまた、子どもの時に店で買い求め、喜んで家に持ち帰った懐かしいお菓子への思い入れを表現しようとしているのだそうです。
「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の「パリブレスト」(ホール3150円、プティガトーサイズ504円)

「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の「パリブレスト」(ホール3150円、プティガトーサイズ504円)

たとえば、この「パリブレスト」。元々、フランスの夏の風物詩である自転車レース「ツール・ド・フランス」を記念して作られた、車輪形のシュー生地の伝統菓子です。しかし、「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」では、全体のフォルムは活かしつつも、皆で分け合いながら食べやすいようにと、花形に連なるような形に生地を絞り出しています。

シュー生地の表面には、クラシックなものはアーモンド粒やスライスをまぶしますが、こちらではカソナードを使ったシュトロイゼル生地を乗せて焼き、サクサク、カリカリの食感をプラスしています。

また、クリームは、濃厚なヘーゼルナッツのプラリネ入り生クリームですが、低脂肪のクリームを使って軽やかに。伝統的な物はバタークリームやカスタードを合わせたベースにプラリネが入るので、かなりどっしりと重たいクリームですが、より現代的な軽さを追求しています。さらに、中にやわらかなペースト状のプラリネそのものが入っていて、切り分けるととろりと流れ出します。そんな「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」独自の「パリブレスト」は、パリの新聞『フィガロ』紙で「パリ一番」と絶賛されるほどの看板商品となっています。
「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の「サントノーレ」(ホール3570円、プティガトーサイズ525円)

「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の「サントノーレ」(ホール3570円、プティガトーサイズ525円)

「サントノーレ」も面白いスタイルの新提案に。伝統的なサントノーレは、パイ生地の土台に直接、リング状のシュー生地を絞って焼きますが、こちらでは、パイ生地とシュー生地の美味しく焼き上がる時間や温度は異なると考え、別々に焼き上げます。パイ生地は、通常の作り方とは逆にバターで生地を包むため、技術的に難易度が高いアンヴェルセと言われる方法で、よりサクサクとした食感にしています。

また、従来は円形に、表面を飴がけにした一口大のシューを3つ配して、上に積み上げるように組み立てるお菓子ですが、切り分けやすさを追求し、シューをサイドに配置した四角い形に変更。クリームを絞る口金には、伝統的にこのお菓子に使われる「サントノーレ口金」を使用していますが、生クリームに少しマスカルポーネを加え、より口どけよくしたのは、新たな工夫の一つです。
「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の「タルトタタン」(ホール4200円、プティガトーサイズ630円)

「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の「タルトタタン」(ホール4200円、プティガトーサイズ630円)

フランス菓子の定番「タルトタタン」の誕生秘話として伝わるのは、ホテル・タタンを経営する姉妹が、りんごのタルトを作る際、うっかり底生地を敷かずに鍋にりんごだけ入れてしまい、後から生地をかぶせてひっくり返して作ったという物語。本来はそのように、りんごの塊を鍋に敷きつめ、直火にかけてカラメル化するまでじっくりと焼いていきますが、「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の「タルトタタン」は、パティスリーなのでオーブンでできるようにと工夫したそう。

りんごを薄く切ったものをミルフィーユ状に重ねて焼き上げることで、浸透圧によって上から徐々にカラメルの味が浸み、りんごの層を1枚1枚全て違う味わいに仕上げます。

レモンの酸味も利かせたりんごは、とてもやわらかく、スプーンですっと切ることができるほど。それを、サクサクのアンヴェルセのパイ生地にのせ、食感の対比が楽しめるようになっています。さらに、横に添えられたカリカリのシュトロイゼルの食感もプラス。
「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の「エクレールカフェ」(左)と「エクレールショコラ」(右)(各525円)

「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の「エクレールカフェ」(左)と「エクレールショコラ」(右)(各525円)

エスプレッソのような濃いコーヒー味を出したいと、研究を重ねたという「エクレールカフェ」。ただ香りだけでなく、食べた時に、わぁ美味しい!と感動する味にするため、周囲に薄いミルクチョコレートを巻いたそうです。一方、薄いスイートチョコレートを巻いたのが「エクレールショコラ」。クリームには、はっきりと感じられるほどの量ではありませんが、プラリネやバニラ、天然塩のフルール・ド・セルも加え、まろやかな味わいにしています。「塩は、隠し味としてどの菓子にも入っている」そうですが、決して塩味として感じられるほどではなく、口の中でフレーバーに余韻をもたせるためだと言います。

この「エクレールショコラ」については、パリの物は、よりチョコレート感が強いということ。日本出店にあたり、日本人の味覚で試食してもらったところ、日本人には強すぎるのではという意見があり、同じチョコレートを使っていますが、味の出し方を変え、少し控えめな表現にしたそうです。
「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の「モカ」(右)(525円)

「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の「モカ」(右)(525円)

コーヒー豆の形をした「モカ」や、メレンゲをのせた「タルトシトロン」(ホール2940円、プティガトーサイズあり)も同じように、パリではコーヒーやレモンの味がより強調されているそう。「フランス人は濃い味が好きなので、日本では、コーヒーも抽出時間を変えた」とコンティチーニ氏。

パリの味をそのまま持ってくるのではなく、その国の文化風土に根差し、「懐かしい」と思ってもらえるような味を表現するため、一つ一つ吟味しているのです。

続くページでは、こちらも又個性的な焼き菓子類と、詳しいショップデータをご紹介します。