オール電化住宅/オール電化住宅の実例・入居者の声

立体的で広い空間があるのに、寒くない家

省エネなのに暖かいオール電化住宅「青梅の家」の続編です。この設計を始めたとき、私たちの意識には二つの近代建築の名作住宅があったのです。

執筆者:粕谷 奈緒子

数キロ先までの南側の雄大な景色と、北の背面に控えた杉木立の山に挟まれ、風景につながったオール電化住宅「青梅の家」。前回は、冬の寒さに備える工夫について書きました。今回も引き続き「青梅の家」をご紹介します!

「青梅の家」の原型は?

「青梅の家」の設計を始めたとき、私たちの意識には二つの近代建築の名作住宅がありました。

「ミューラー邸」
単なる四角い箱に見えますが・・・。
共に、現在のチェコ共和国に1930年に完成した住宅で、一つはオーストリアの建築家アドルフ・ロースによる「ミューラー邸」(プラハ市)、そしてもう一つはドイツから後にアメリカに亡命した建築家ミース・ファン・デル・ローエによる「トゥーゲンハット邸」(ブルノ市)です。

 


「ミューラー邸」内部
天井高の様々な空間が、立体的に組み合わされています。
アドルフ・ロースの設計した「ミューラー邸」は、建物の中に様々な天井の高さを持つ部屋が立体的に複雑にちりばめられ、少しずつ床の高さが異なる部屋から部屋へと巡っていくことのできる「立体迷路」のような住宅です。外から見ると一見単純な四角い「箱」なのですが、中に入ると、外観からは思いもよらない複雑で豊かな空間が現れます。


ミューラー邸をデザインしたアドルフ・ロースは、このようなデザインの方法を「空間的なプラン」(ラウムプラン)という言葉で表現しました。


「トゥーゲンハット邸」
道路側から見ると閉鎖的な平屋建てに見えますが・・・。
「ガラスの家(ファンズワース邸)」「バルセロナ・チェア」で有名なミース・ファン・デル・ローエの名前は、建築や家具のデザインに興味のある方なら、一度は耳にしたことがあるでしょう。


「トゥーゲンハット邸」
反対側から見ると、全面ガラス張りの窓がある開放的なつくりです。
「トゥーゲンハット邸」は、彼のヨーロッパ時代の代表作で、ブルノ市街に向かった緩やかな下り斜面に建てられています。道路から見ると一見したところ、閉鎖的な平屋建ての住宅のようですが、美しい大理石張りの階段で居間に下りると、全面ガラス張りの窓から市街を見下ろす素晴らしい眺望が開けます。

目指したのは、
2つの名作の特長を併せ持った家

風景に大きく開いた「青梅の家」外観
規模的にはまるでかないませんが、私たちが「青梅の家」の敷地で実現したかったのは、この二つの名作住宅の特長をあわせ持ったような住まいでした。つまり、「立体的で豊かな内部空間を持ち」「玄関から居間に入ると、目の前に遥か先までの風景が一気に広がる」ような住宅を作りたい、と考えたのです。

21世紀に入った今、80年も前の住宅をデザインの参考にするのは、もしかすると不思議に思われるかもしれませんね。でも考えてみれば、世の中がどれだけ進歩していても、人間の体は今も昔もほとんど違いはありません。たとえ数百年以上前の建築であっても、私たちは自分の体を使って、当時と同じように空間を感じることができます。それこそが、実は建築のもっとも面白いところなのです。

トップライトで空が切り取られて見えるなど、外の気配が感じられるつくり。
短い階段で立体的につながった「青梅の家」の室内では、例えば子供部屋の気配を居間から感じたり、屋上のテラスからキッチンの通路を見下ろしたりできます。それだけでなく、室内を動くにつれて、遠くの景色や切り取られた空・近くの木立など、外の気配がさまざまに感じられ、実際の空間以上の広さが感じられるようになっています。


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