企業年金・401k/企業年金・401k関連情報

退職給付会計が見直されると401kが急増する?(3ページ目)

退職給付会計の見直しが検討されています。時々、新聞の一面になる話題なのですが、ほとんどの人にはぴんとこないことと思います。しかし、これ、会社員にとって他人事ではない問題なのです。企業年金や退職金が401kに変更される可能性を秘めているかもしれません。

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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退職金や企業年金は、401k化していく?

ここまで、できるだけ分かりやすく基本を説明してきました(専門家からすれば怒られそうなほどに!)。最後に、今回の会計基準の見直しに対して企業はどのように対応する可能性があるか、考えてみたいと思います。

まず考えられるのは、「制度の見直しはあるか」です。これは会社の経営者のスタンスや人事コンセプトにもよるので一概にはいえませんが、上場企業において退職給付会計が決算数値をブレさせる大きな要因になることは間違いありません。これを嫌う会社は制度の見直しに着手することになるでしょう。すでに改定があったから、今回はない、という保証もありません。

次に「どのような改定がありうるか」です。大きく2つのアプローチが考えられます。
1つは「確定給付型の企業年金制度や退職金制度の枠組みは変えず制度変更する」というものです。例えば終身年金を有期年金に変更したり、年金給付期間の利回り(年金受け取りにすると未受け取り分には利息がつくので、一時金受け取りより多くもらえていた)を引き下げる方法などがあります。また、実勢金利に受取額が連動するような仕組み(キャッシュバランスプラン)を採用する企業も増えてくるかもしれません。
なお、減額に該当する場合は労使合意の努力が大前提であり、また労働基準監督署や厚生労働省の判断を要する局面もあり、強引な引き下げがなんでも通るわけではありませんが、こうした取り組みが進む可能性は高いといえます。

2つ目のアプローチは「確定拠出年金の活用」です。今まで導入していなかった会社は制度の導入(今までの制度を変更する等)に踏み切る可能性があるでしょう。また、すでに401k導入済みの会社においても、401kの割合を高くする(今までの制度の割合を減らす)可能性があります。
確定拠出年金を採用すれば、とにかく退職給付会計の問題から会社は解放されるわけですから、この問題を重要視する会社では検討される可能性が高いといえます。
この場合は、必ず労使合意が必要です。掛金を多くもらう(個人の運用能力を考慮して運用利回りが低くても退職給付水準が確保できるように)方法や、投資教育をしっかり会社負担でやってもらうなどの約束を取ることがポイントになります。

その他、制度廃止というのも考えられますが、この場合は従業員の労働意欲が減退する可能性などに十分考慮するべきで、あまりいい効果は期待できません(決算上はプラスでも、人心にマイナス)。業績がきわめて厳しい会社以外はこの選択肢は取らないと思われます。OBだけ年金給付廃止というのも同様で、選択肢としては優先順位は低めです(解散はOBの合意が不要ですが、裁判等のトラブルになることが多くあります)。

私は確定拠出年金の専門家ですが、会社の会計の都合だけで401k導入をするパターンはあまり好ましいとは考えていません(→過去のコラム「「会社の経営改善のため401k導入」は経営にマイナス?」等参照)。しかし、ある程度、401k化が進むことは流れの一つなのだろうと思います。

401kは401kで、良いところもあります。それは「事後的に会社が減額してくることが絶対にない」というところです。会社が破綻間近でもすでに積み立てた401k資産を減らされることはありませんし、実際に破綻しても全額外部保全されており、守られます。これは今のような時代に、会社員ひとりひとりにとってとても重要なポイントです。

自分の財産の管理のみ自分で責任を負えばいい」というのは、時代に合った退職金・企業年金のアプローチかもしれません。
もし、自分の会社で401kが導入になった場合は、ひとりひとりが自覚を高めて制度の有効活用を考えてみてください。
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