こうした決算上の情報開示を毎年度行っていくわけですが、大きくブレる要素があります。それは、企業年金の準備資産として株式や債券(外国の資産もある)を保有していることです。1000億円保有していると思っていた年金資産も、1年後には900億円の価値に下がることがあるわけです。こうした株価や金利の変動によって毎年度ごとに資産価値も変動することになります(資産価値は最新の時価で把握することが大切です)。また遠い将来のことを見込む話ですから金利の変動や会社の事情の変更により予定が狂うということもあります。

実際の決算では、こうした差異を調整することが認められていました。特に株価の変動などによる影響を毎年度ダイレクトに反映せず、分割計上することが可能でした。むしろ調整しないと本業とは関係ない変動で、決算数値が上下にブレすぎると考えられたわけです。

新しい基準案では隠さず毎年即時反映させる

しかし近年の考え方は、ブレてもいいので今、目の前にある状況をしっかり把握すべきだ、という方向にあります。企業年金の積立不足についても毎年度全額一括処理したほうが情報開示の透明性として好ましいという考え方にもとづき、新しい会計基準案が示されることになりました。

もし、この基準案で会計基準が変更されることになれば、企業としては、株価下落時には大きな債務を決算に計上しなければならないということになります。株価が下がる時期というのは、一般的に景気も良くない時期ですから、企業の本業の業績も下がる可能性があり、ダブルパンチで決算を悪化させる可能性があるといえます。しかも、その決算を公表したら、自分の株価がさらに下がるかもしれません。

この基準案がそのまま採用されるかは分かりませんが、もしそうなった場合は2012年3月の決算から影響が出るということになります。つまり企業が対策を進めるとしたら、2012年3月までに退職金・企業年金制度の見直しを実行しなければならないわけです。

ところで、確定拠出年金(日本版401k)は、こうした退職給付会計の積立不足問題から除外されています。なぜなら、401kにおいては将来にわたっての会社の支払責任がないからです。資産の管理・運用はひとりひとりが自己責任で行いますので、会社は掛金をきちんと拠出すれば、退職給付債務の難問から解放されることになるわけです。

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