退職給付会計が見直されると、あなたの退職金・企業年金に影響が?
上場企業の決算は公開されなければなりません。しかし、各社がまちまちのルールで公開していては、過去の業績や将来性を評価できません。そうなると、可能な限り統一的な判断(会計基準)にもとづいて数字が作られる必要があります。こうした基準は、国内だけでのみ統一されてばいい、という時代ではありません。国際的にも統一的な基準で比較できることが望ましいと考えられるようになっています。かつては、欧州、米国、日本は微妙に異なる基準があったわけですが、現在では国際会計基準というものに統一・収れんを図っていく方向で整理が進められています(いわゆるコンバージェンス)。
この際、退職金や企業年金の準備状況は大きな問題となります。これを「退職給付会計」と呼びますが、今この見直しが大きな議論となっています。企業会計基準委員会が3月11日に新しい退職給付会計の案を出したことが各紙に報道されていたところです。
こういう話をすると、「それって、株を買う人だけの話でしょ?」と思うかもしれませんが、実はそうではないのです。会社員1500万人くらいに影響があるかもしれない話なのです。もしかすると、あなたの退職金や企業年金の変更にもつながっていくかもしれません。
今回は退職給付会計が変わると退職金や企業年金がどうなるか、簡単に説明します。
退職給付会計を簡単に説明してみると…
「退職給付会計」とか「国際会計基準へのコンバージェンス」とかいうともう難しそうで、思考停止してしまいます。私もめげてしまいそうなくらい複雑な話題なのですが、できるだけ簡単に説明してみたいと思います。退職給付会計のねらいを簡単にいえば「社員やOBのために会社が負っている退職金や企業年金の支払責任を明確化する」ということです。このために複雑な計算をして、全社員と全OBに対して会社の支払責任の現在価値がどれくらいあるかを算出しています(退職給付債務)。
とはいえ、巨額の支払責任でも準備が万全であれば問題はないわけですし、どんなに支払責任が小さくても準備が全くできていなければ問題です。そこで、「実際にどれだけ積み立てられていて、準備不足はどれくらいか」も見えるようにします。実際に積立済みの資産額と支払責任の額とを引き算し、実際に不足している分を算出し、決算に計上します(ほとんどの場合は不足が出る)。これは退職給付引当金と呼ばれるもので、会社の貸借対照表では負債として認識されます。
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