藪の中/芥川龍之介 著
■作品のあらすじ:藪の中で発見されたある男の死体を巡り、死体の発見者、殺された男の妻、殺される直前に夫婦に出会っている盗賊、その他多少なりともかかわりのある人物の告白のみで描かれた作品。
■おすすめの理由やエピソード:
様々な人物に視点を変え、男の殺された状況が徐々に判ってゆくのではなく、むしろ辻褄が合わなくなってゆくのが面白いです。全てが矛盾ではなく、ある人のある部分の証言は合致していたりします。人は誰しも真実の中に嘘を入れたり、その逆もしかり、といった人間の本質が垣間見える気がしてきます。
この作中に出てくる多襄丸を主役とした映画「TAJOMARU」を観た事をきっかけに読みました。映画は全体を通してみれば全く違う内容ですが、小説と同じ藪の中のシーンがあります。そこで起きた事はちょっと謎になっていて、なる程この小説の真実の解らない沸々とした感じが表現されていました。
自分は図書館で借りて読みました。短編集だったのですが、正直最初の数行で全く入っていけない作品もありました。その中でこの作品は逆に何度も読み返してしまいました。