七十二候。一年を五日ごとに分けることで、自然界の微妙な変化を感じ取れる暦。それぞれの季節にふさわしい名を付けて時候の移り変りを表しています。詩が、動物や植物が、旬の食べ物が、あなたを季節の喜びに誘ってくれます。

草露白し(くさつゆしろし):9月8日~12日頃

草に降りた露が白く光り、秋の趣がひとしお感じられる頃。肌寒さを感じさせる朝夕の心地よい涼風が、本格的な秋の到来を告げてくれます。

白露に家四五軒の小村哉(正岡子規)
除け合うて二人ぬれけり露の道(井月)

写真はイメージです

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月見
(つきみ)/やって来ました、月見て一杯! 旧暦八月十五日は中秋の名月です。さて酒肴を揃えて宴を催し風流に決めるか、それともお月さんに供え物をして農事の収穫に感謝するか。

何着てもうつくしうなる月見哉(千代女)
名月の見所問はん旅寝せん(芭蕉)

秋刀魚(さんま)/漢字のとおり秋を代表する味覚の王様ですね。ジュウジュウ焼かれている、あの音と匂いが食欲を刺激します。田舎じゃ、やっぱり七輪で炭火焼き。もうもうと煙りを上げて盛大に、腹一杯楽しみます。

江戸の空東京の空秋刀魚買ふ(摂津幸彦)
星降るや秋刀魚の脂燃えたぎる(石橋秀野)

鶺鴒鳴く(せきれいなく):9月13日~17日頃

チチン、チチンと小川や沼などの水辺で、高い通る声で鳴き始める頃。河原の石をちょんちょんと渡り歩いている姿が愛らしいですね。長い尾を常に上下に振るっていることから、石たたき、庭たたきとも呼ばれています。

鶺鴒よこの笠叩くこと勿れ(子規)
せきれいの石次の石次の石(井口さだお)

写真はイメージです

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コスモス
/和名は秋桜。ホラ、この字を見ただけでもうあの風景が浮んできます。畑のパノラマ、道路沿いに延々と続くライン……、秋を満喫させてくれれます。日本でのデビューは明治時代の中頃とか。

秋桜賢治の海の輝けり(阿吽)
風の無き時もコスモスなりしかな(粟津松彩子)

野分(のわき)/今でいう強い風、台風に当たります。突然やってきて、アッという間に通り抜けていく台風を、昔の人は「野の草を分けて吹く風」、つまり「野分」といっていたんですね。

野分して盥(たらい)に雨を聞く夜かな(芭蕉)
鶏頭のまだいとけなき野分かな(正岡子規)

玄鳥去る(つばめさる):9月18日~22日頃

玄鳥とは燕(つばめ)のこと。春に南から訪れていた燕がヒナを孵し、南へ戻って行きます。この間に子を育てて帰っていくんですね。いつの間にか空になった軒下の巣。来年も帰って来いよぉ。

軒燕古書売りし日は海へ行く(寺山修司)
表札を覚えてつばめ去ってゆく(現代川柳・貝原博次)

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(くり)/この時季が食べごろ。大粒でおいしい丹波の栗が有名ですね。たんぱく質・ビタミン類・カルシウム・カリウム等、人間が生きていくうえで欠かせない栄養を沢山含んでいます。森が作ってくれた最強の滋養食品。

絵所を栗焼く人に尋ねけり(夏目漱石)
つぶら目の瞠れるごとき栗届く(嶋崎茂子)

(いわし)/秋刀魚と並ぶ庶民の味。刺身・塩焼・煮物・酒蒸しと、昔から色々な調理法が工夫されてきた魚ですね。次いでに美味しい魚の見分け方を。目が透き通っている、エラが美しい紅色、ずんぐりと太っている、そして身が固いものを選びましょう。

大漁や鰯こぼるる浜の道 (正岡子規)
打よする波をふまへて鰯引く(高浜虚子)

雷声を収む(かみなりこえをおさむ):9月23日~27日頃

大気が安定してきて雷が鳴り響かなくなる頃。夏の名残りを感じさせた雷さんも去って、澄んだ空気と爽やかな大気の秋の到来です。夜空の星が綺麗だぞぉ。

一度二度雷火立つ夜の離郷かな(藤原実)
夏めくや霽(は)れ雷の一つきり(飯田蛇笏)

秋分(しゅうぶん)/昼と夜の時間が同じになる日、この日から秋の夜長の始まりですぞ。以後冬至(とうじ)まで昼は次第に短くなります。そして、前後三日間ずつを合わせて七日間はお彼岸。ご先祖様の墓参りを忘れずに。

秋彼岸ただ一本の銀杏も(廣瀬直人)
秋彼岸足音ばかり空ばかり(あざ蓉子)

甘藷(さつまいも)/蘭学者・青木昆陽さんが栽培方法を確立。それを全国に精力的に広めることで、飢饉時に人々を飢えから救ったんですね。東京目黒区の墓碑には「甘藷先生墓」と刻まれている。

ほつこりとはぜてめでたしふかし甘藷(富安風生)
藷畑にただ秋風と潮騒と(山本健吉)

次回は、十月:神無月。お楽しみに!
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