草露白し(くさつゆしろし):9月8日~12日頃
草に降りた露が白く光り、秋の趣がひとしお感じられる頃。肌寒さを感じさせる朝夕の心地よい涼風が、本格的な秋の到来を告げてくれます。白露に家四五軒の小村哉(正岡子規)
除け合うて二人ぬれけり露の道(井月)
写真はイメージです
何着てもうつくしうなる月見哉(千代女)
名月の見所問はん旅寝せん(芭蕉)
秋刀魚(さんま)/漢字のとおり秋を代表する味覚の王様ですね。ジュウジュウ焼かれている、あの音と匂いが食欲を刺激します。田舎じゃ、やっぱり七輪で炭火焼き。もうもうと煙りを上げて盛大に、腹一杯楽しみます。
江戸の空東京の空秋刀魚買ふ(摂津幸彦)
星降るや秋刀魚の脂燃えたぎる(石橋秀野)
鶺鴒鳴く(せきれいなく):9月13日~17日頃
チチン、チチンと小川や沼などの水辺で、高い通る声で鳴き始める頃。河原の石をちょんちょんと渡り歩いている姿が愛らしいですね。長い尾を常に上下に振るっていることから、石たたき、庭たたきとも呼ばれています。鶺鴒よこの笠叩くこと勿れ(子規)
せきれいの石次の石次の石(井口さだお)
写真はイメージです
秋桜賢治の海の輝けり(阿吽)
風の無き時もコスモスなりしかな(粟津松彩子)
野分(のわき)/今でいう強い風、台風に当たります。突然やってきて、アッという間に通り抜けていく台風を、昔の人は「野の草を分けて吹く風」、つまり「野分」といっていたんですね。
野分して盥(たらい)に雨を聞く夜かな(芭蕉)
鶏頭のまだいとけなき野分かな(正岡子規)
玄鳥去る(つばめさる):9月18日~22日頃
玄鳥とは燕(つばめ)のこと。春に南から訪れていた燕がヒナを孵し、南へ戻って行きます。この間に子を育てて帰っていくんですね。いつの間にか空になった軒下の巣。来年も帰って来いよぉ。軒燕古書売りし日は海へ行く(寺山修司)
表札を覚えてつばめ去ってゆく(現代川柳・貝原博次)
写真はイメージです
絵所を栗焼く人に尋ねけり(夏目漱石)
つぶら目の瞠れるごとき栗届く(嶋崎茂子)
鰯(いわし)/秋刀魚と並ぶ庶民の味。刺身・塩焼・煮物・酒蒸しと、昔から色々な調理法が工夫されてきた魚ですね。次いでに美味しい魚の見分け方を。目が透き通っている、エラが美しい紅色、ずんぐりと太っている、そして身が固いものを選びましょう。
大漁や鰯こぼるる浜の道 (正岡子規)
打よする波をふまへて鰯引く(高浜虚子)
雷声を収む(かみなりこえをおさむ):9月23日~27日頃
大気が安定してきて雷が鳴り響かなくなる頃。夏の名残りを感じさせた雷さんも去って、澄んだ空気と爽やかな大気の秋の到来です。夜空の星が綺麗だぞぉ。一度二度雷火立つ夜の離郷かな(藤原実)
夏めくや霽(は)れ雷の一つきり(飯田蛇笏)
秋分(しゅうぶん)/昼と夜の時間が同じになる日、この日から秋の夜長の始まりですぞ。以後冬至(とうじ)まで昼は次第に短くなります。そして、前後三日間ずつを合わせて七日間はお彼岸。ご先祖様の墓参りを忘れずに。
秋彼岸ただ一本の銀杏も(廣瀬直人)
秋彼岸足音ばかり空ばかり(あざ蓉子)
甘藷(さつまいも)/蘭学者・青木昆陽さんが栽培方法を確立。それを全国に精力的に広めることで、飢饉時に人々を飢えから救ったんですね。東京目黒区の墓碑には「甘藷先生墓」と刻まれている。
ほつこりとはぜてめでたしふかし甘藷(富安風生)
藷畑にただ秋風と潮騒と(山本健吉)
次回は、十月:神無月。お楽しみに!