これまでのデザイン・これからのデザイン
社) 日本インテリアデザイナー協会(JID)の連続デザインセミナー「日本の意匠 『温故知新』物語」第四話が、2012年8月24日(金)18:30より、江戸東京博物館にて開催されます。この連続セミナーは、1958年に日本室内設計家協会として結成され、創立50周年を迎えたJIDが、企画立案。
創立50周年記念出版された書籍 『日本デザイン50年』 のサブテーマでもあった “Next Design” を指向するために、これまでのデザイン・これからのデザインをキーワードにして「日本の文化、暮らし、環境」を探訪するセミナーです。
各々のテーマから引き出されるデザインエッセンスは、一般の方も含め将来を担う若いデザイナー、学生に幅広く伝わっています。
「漆」とアイリーン・グレイの家具デザイン
さて、今回第四話は、鮮やかに古今をつなぐ 『漆の術』 可能性の話。
「漆=JAPAN」と命名されるほど日本文化の代名詞のひとつが、漆です。暖かみと厚みのある光沢のある漆は、独特な雰囲気を醸し出す素材です。
漆利用の歴史は古く、縄文時代から開始され、土器の接着・装飾、木製品・装身具の塗装なども出土。2000年に北海道函館市で出土した漆塗りの副葬品が約9000年前に作られたもの。これが現存する最古の漆塗り製品と聞きます。
個人的に「漆」といえば、アイリーン・グレイの家具を連想します。20世紀前半、彼女のアールデコデザインは、東洋的いや日本的な様式のものが多くあります。実際に日本人工芸家の下で「漆工芸の技術」を習得したアイリーン・グレイは、椅子のみならず、スクリーン等多くものにその手法を展開し、現代に通じるモダン家具デザインを確立したのです。「漆」が、家具デザイン産業の「素材」として実施された例ですね。
Transat/トランザ 1927 D:Eileen Gray /アイリングレー (引用:SD9606 建築家の椅子111脚 / 鹿島出版社 / 34P)
昔、日用品であった漆器は日本人の生活様式の変化で需要が減少、今では高級な美術工芸品とみなされ、一方、アジア諸国の安価漆器製品が一般家庭での需要主流となっています。
漆器産地が持つ技術と経験を産業とは何かを模索するなか、1998年に木曽漆器の産地では、内装素材「塗料」として文化財保存修復の事業を立ち上げました。
文化保存修復には木曽の漆工芸技術が使用されていることは、あまり知られていません。
現在は、名古屋城の復元工事にも携わっています。
文化財には、寺院や神社などに伝えられた調度品・家具、彫刻、建造物などの国宝や重要文化財と、祭り等で使用される神輿や山車等の他に時代を得た生活の道具の有形民俗文化財とがあります。
今回のセミナーでは、木曽漆器を中心に漆業界の抱えている課題と産地の取組みと文化財保存修復を支えている職人にスポットをあて素材としての漆、知られざるその特徴、技術などのお話を伺います。
では、今回のセミナー「鮮やかに古今をつなぐ『漆の術』 可能性の話」の見所をご紹介しましょう。