従来のLDK発想とは異なる現在の空間設計!
しかし、現在の住宅、特に戸建て住宅では、この従来のLDK発想があてはまらなくなりつつあります。まず、かつてのようにL(リビング)、D(ダイニング)、K(キッチン)の各スペースが区切られることなく、ひとつながりのオープンな空間となってきました。それは、それぞれの各空間の用途を制限しないということでもあります。LDK以外の空間との連続性を持たせることも最近のトレンド。ですから、「この住宅は何LDKなの?」と聞かれると、ちょっと困った顔をする営業マンや設計者もいると思います。
例えば、オープンになったLDKと吹き抜けを組み合わせる空間づくりも積極的に取り入れられるようになってきましたし、「スキップフロア」(各階の間に1.5階や2.5階のようなスペースを設けること)のような空間設計も行われるようになってきました。スキップフロアの場合は、従来のLDK発想による間取りとは大きくかけ離れたかたちとなります。
そのくらい住宅の空間づくり、間取りは今、かつてとは大きな変化を見せています。それは、構造上の進化にも一つの要因がありそうです。一昔前の建物は構造が弱く、そのため柱や仕切りを数多く必要としました。現在はその点が改善され、空間を大きく使うことができるようになったからです。
それから前ページでご紹介した「リビング階段」の採用は、階段そのものの意匠性が高まったことも一因といえそうです。つまり、くつろぎの空間であるリビングに階段があっても雰囲気を壊さないデザイン性が確立されてきたから、ということです。
さて、従来のLDKによる住まいづくりが、なぜ現在の住宅に当てはまらなくなったかというのは、私たちのライフスタイルが、それを必要とした時代と大きく変わったからです。かつての住まいは、夫婦+子ども2人の4人暮らしを基本スタイルとして考えられていました。
家事動線や環境配慮も間取りの重要ポイント
それが現在では、夫婦+子ども1人はおろか、夫婦のみ、さらには一人暮らしの世帯も増えてきています。また、二世帯居住のニーズも増えてきています。このように生活スタイルが多様化すると、かつてのLDK発想とは異なる間取りの構成の仕方が必要になってくるわけです。この他、間取りで重視したいのが家事動線。キッチンと洗濯スペース(洗濯物干し場も含む)、浴室の距離が短い方が、家事にかかる時間を短縮できます。夫婦共働き世帯が増加している今、このあたりの間取りの配慮も重要な要素の一つとなります。
住戸内の「快適性」も大切なポイント。採光と通風の善し悪しは間取り次第で決まり、20~30年前と現在では異なる間取りの発想が取り入れられつつあります。例えば、「昔の住宅は暗かったな」と感じる方はいませんか。それは、その住宅がやたらと間仕切られていたからだと思います。
風通しが良くなかったのも同様の理由からでしょう。開放的な間取りが可能となるのには構造や気密断熱性といった基本性能の高さが不可欠ですが、採光や通風に配慮することも一層の省エネや節電に貢献しますから、間取りは重要になるのです。
要するに間取りについてよく理解するというのは、「良い住宅」について知ることにつながりるのです。家族のコミュニケーションや環境、家事動線などの「理屈」を極めることは、良い住宅を取得するための近道になると思います。
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