発達障害/学習障害(LD)

学習障害(LD)の種類・症状・診断・治療

学習障害とは、Learning Disabilitiesの頭文字を取り「LD」とも呼ばれています。算数だけができない、文字が読めないなど、様々な症状が見られ、程度も様々です。また、学習障害には医学的な要素と教育的な要素の2面性があります。診断法、治療法も含め、詳しく解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

名前の通り、学習することにおいて障害が見られる学習障害。多くは教育現場で見つけられます。教育現場では、広く、聞いたり話したりする力などの学習の能力での障害を言う場合が多いですが、医療現場では、発達障害の1つとして、読み書きなどの特定の能力の障害、計算能力など算数ができないタイプの発達障害として考えています。

学習障害とは

文部科学省が平成11年7月に作成した「学習障害児に対する指導について(報告)」によると、

「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。」

と定義されています。

つまり、普段の勉強はできるが算数の計算だけできないとか、話したり聞いたりすることはできるが文字が読めず、本も読めない、といった症状です。

学習障害の1つである「ディスレクシア(Dyslexia)」は、日本語では失読症、難読症などと訳されます。

学習障害の原因・検査

脳の何らかの機能障害によるものです。どの場所に異常があるかは現在判っていません。機能障害なので、頭のCTやMRIなどの画像や脳波検査では異常が無いことがほとんどです。様々な感覚を理解し、イメージとして統合する能力に問題があると言われています。つまり、文字とイメージが一致しないわけです。そのため、文字が何を表わしているのか理解できないわけです。

学習障害の症状

学習障害

読み書き、計算の科目のある時から見つかります

■言語能力として読み書きの障害
子どもの頃に見られる読み書きの障害を発達性ディスレクシアと呼びます。日本語では発達性失語症です。目も見えるし耳も聞こえるし、会話もでき、理解できるのですが、本人の努力に関わらず、文字を読んだり、書いたりできないのです。

発生頻度としては、アルファベットを使う欧米では3~12%、日本では2002年に小中学校で調査された結果、3.3%でした。ただし、日本の場合は、漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベットと数多くの文字がありますから、今後の調査によっては変わってくると思います。

特徴として、文字を1つ1つ読んだり、勝手に文字や文章を区切ったり、読んでいる所を指で押さえながら読んだり、行間が狭いと読み間違いや行を取り違えたり、読めない文字を飛ばしたり、文末を変えたりします。読み方も、音読みや訓読みしかできない、小さい文字は読めない、似た文字を間違えるなどの特徴があります。

これらの症状がある時には、発達性ディスレクシアの可能性が高いです。診断は、標準化された読字・書字検査を行います。

■算数・計算の困難
数字や記号そのものを理解できない、簡単な計算、足し算引き算ができない、指を使わなければ計算ができない、桁の繰り上がりや繰り下がりが理解できない、数の大小が理解できないなどの症状があります。

■推論の困難
見取り図、展開図が理解できない、単位が理解できない、早とちりが多い、話が飛ぶなど物事の流れを理解できない、イメージとイメージを統合することができないなどの症状があります。

学習障害の結果として、
  • 社会性の困難
  • 運動の困難
  • 注意集中・多動による困難
を伴うことがあります。

学習障害の診断・類似した病気

まずは、脳に出血や梗塞、腫瘍などの器質的な病気が無いかどうか、頭部のCT、MRI、脳波検査を行い、異常がないことを確認します。次に、知能テストを行い、知能の異常な遅れがないかどうかを検査します。心理学的な検査で、脳の機能を評価します。

計算や読み書きの検査を行い、診断していきます。

学習障害なのか、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)なのか、高機能広汎性発達障害なのか、診断する必要があります。つまり、対策が変わってくるからです。

学習障害の治療法

学習障害と診断されることで、治療が始まります。なぜなら、つい個性と考えられ、そのままにされがちだからです。学習障害はその障害の程度によって異なりますし、本人のペースに合わせて学習していくことが大切。あせらず、繰り返し学習することです。決して、自信を失わないように配慮したいものです。

さらに、現在は、文書作成にはワープロ、計算には計算機を使うことで、日常生活を送ることができる場合があります。最近は、音声認識して文書を作成してくれるPCやスマホもありますから、そうした機械を使うことで、より日常生活を快適になります。そのため、道具の使い方を教えていくのも1つの方法です。

臨床心理士、精神科医、小児神経専門医などの協力と小中学校の先生の協力が必要ですので、まずは、専門医に相談しましょう。

発達障害情報・支援センター


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