余剰資金で投資をするべき、という誤解
インフレになってから投資を始めるのではなく、今から始めることが大事。
ガイド山口―いずれ、インフレになるから老後は心配いらないと考える人も多いですね。
野尻哲史さん(以下敬称略):退職者のアンケートの中で、インフレリスクに対する不安は、3年前に比べ10ポイントくらい下がっています。「デフレが続いているから、インフレなんて」って言うのが背景だとおもいますが。残念ながら、来る可能性が高いのは、景気がよくて賃金も上がるディマンドプル・インフレではなく、物価は上がるけれど景気は悪いままというコストアップインフレ。これが来ると、いわゆるスタグフレーションになりかねないので、物価の上昇より金利水準の方が低いというは往々にしてあります。インフレリスクをこんなに軽視していてはいけないですね。
――出る、出ると言われて出ないお化けのように、長い間デフレに馴らされているんですね。
野尻:分からないから準備しましょうと言っているんです。
――インフレになってから資産運用を始めればいいという意見もあります。
山崎俊輔さん(以下敬称略):でもそういう人って、インフレになってもやらないだろうね。
野尻:少なくとも、インフレの議論で、運用をやらなくていいという議論には絶対ならない。みなさん、今からでも用意はしましょう。「インフレになってからやりましょう」というのはまったく、ナンセンスです!
――『インフレになるまで余剰資金を貯めておいて、それから運用』というよくある常識は捨てなさいと。
山崎:コツコツ貯めた100万円を初めて投資しようとしたらだいたい、震え上がってしまってできなくなってしまうから、最初の1万円からいきなり投資信託で積み立てていく方が、100カ月の投資経験+上手くいけば、定期預金よりも良い運用益が手に入ることになる。損をしてもそれは経験として役に立つし、毎月1万円だから100万円でいきなり投資したときの損よりもインパクトは小さくてすむ。まずは運用を始めてみることをおすすめします。
――本にも書いていらっしゃいましたね。
山崎:確定拠出年金でも、前の制度からいきなり1000万円もってくると、やはりビックリしてしまって、リスクとれないんですね。その後の、今月から始まる毎月1万円の積立も保守的になる。過去の1000万円が保守的になるのは、正しい感情だけど、来月からの1万円も非合理的なまでに保守的になってしまうんですよ。ゼロから確定拠出年金を始めると、「まあ、ゼロから1万円だし、半分くらい投資信託があってもいいかな」
野尻:投資をするために積み立てるんじゃなくて、積み立てながら投資をする。
山崎:それくらいのほうが、やっぱりいいんですよ。
では何から始めたらいい?次ページでは投資の始め方をアドバイス