夫婦関係/セックスレスの対処法

赤ちゃんを作りたい夫婦に伝えたい精子のお話(3ページ目)

不妊は、妻側だけが原因ではありません。なんと半分は男性側に原因があるのだそう。今回は「男性不妊」の専門クリニックの院長、日浦義仁先生にインタビューさせていただいた内容をご紹介。ぜひ知っておいたいただきたい「精子」のお話です。

三松 真由美

執筆者:三松 真由美

夫婦関係ガイド

精子を「元気に」する方法は?

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オーキッドメーターは、精巣の大きさを測ります

二松:では、男性のために精子を元気にする方法を教えてください。

日浦先生:ストレートな質問ですね。一般の生活の中で精子のみを元気にするという方法はありません。ただ不規則な生活やストレス、それによる体調不良は、直接造精機能や精子にも悪影響はあると思いますので、規則正しい生活と体調管理が大事だと思います。また当然ですがタバコは精子の質を悪くします。精子のDNAを損傷すると言われていますので、禁煙をすすめます。

あとこれはあまり言われていませんが、精子を長く貯めることはあまり良くないと思います。精子は順次作られていて精巣上体の尾部に溜まります。この溜まった精子が射精のときに出るのですが、出さなければ溜まっている精子は古くなり元気も質も悪くなります。その後にも作られてきた精子が出番を待っているので出さなければこれらも元気がなくなっていきますし、やっと出番が回ってきたときには元気のない古い精子になっています。

禁欲期間が長ければ精子の数は多少増えますが、増えても質は落ちていきますので注意してください。

あと精子の流れが悪いと精巣の精子を作る働きも衰えていきます。なので貯めれば貯めるほど精子の質や状態は悪くなり、結果妊娠にはなかなか至りません。排卵日の月1回の射精だけでは、精子の状態は良くないでしょうね。常に新しい精子にしておくことをおすすめします。

二松:精子がまったくないと診断された場合、なんらかの方法で作り出すことは可能なのでしょうか。

日浦先生:残念ながら現在の医療ではまだ精子を作り出すことはできません。話題のiPS細胞から精子という研究は進んでいますが、まだまだ現実的ではありません。

二松:牡蠣や山芋を食べただけでは精子は元気にならないのですね……。では、最近と十年前の傾向は違って来ていますか? 昔は、男性不妊の場合でも、その事実がわからなくて妻のせいにするという傾向でしたか?

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顕微鏡:精子を顕微鏡で拡大します

日浦先生:最近と昔では不妊症の対応は変わってきています。昔は男性不妊症に対しては漢方薬、ビタミン剤、ホルモン内服薬といった薬や、また精索静脈瘤があれば、その治療(手術)を行うことで精子の数を増やし動きをよくして自然妊娠へ導こうとしていました。確かに薬や手術で精子の数や動きはよくなるのですが、妊娠率が上がったとの報告は国内外を通じてないのです。

一方、婦人科は「男性の治療は効果があいまい」と言って、婦人科的治療として体外受精、顕微授精を進めてきました。精子が一匹でもいれば男性の治療は必要ないとまで言われる極端な婦人科の先生もいました。

今の話の中で男性の治療と女性の治療の意味合いが大きく異なることがわかると思います。男性の治療はご本人を治療して精子の状態を改善させて自然妊娠を目指していること。一方女性の治療はご本人の治療というより妊娠という結果のみを目指しているというところです。

どちらが良いというわけではありませんが、男性側の治療は泌尿器科、女性側の治療は婦人科、とそれぞれ別々に治療されてきました。特に女性側の治療を受けているご夫婦で、男性側の治療を受けている方はほとんどいませんでした。

しかし最近、女性側の治療の体外受精や顕微授精も限界が見えてきました。みなさん体外受精や顕微授精を行えばすぐに妊娠すると思われている方が多いと思いますが、現実は厳しいもので何度も行わなければ妊娠に結びつかない、あるいは結果が出ず諦めるという方が多いんですね。

一方、男性側の治療も自然妊娠につながる画期的な治療は出てきていません。

男性女性どちらの治療も単独では頭打ちになっていましたが、最近、男性の薬物療法や精索静脈瘤の手術を行うことで精子の質が改善し、体外受精や顕微授精の妊娠率を上げるとの報告が出てきました。

このように男性女性両方の治療を行うことで妊娠率を上げることができるのです。誰もが自然妊娠を望んでいます。しかし体外受精や顕微授精というART(補助生殖医療)に頼らざるを得ない患者さんが多いのも事実です。その負担を女性側がすべて背負うのでなく、男性側の治療も行うことで、赤ちゃんという結果をもたらしてくれると考えています。

あと無精子症は十年前は諦められていましたが、精巣内精子採取術(TESE)により精子が採取できれば、顕微授精(ICSI)で妊娠ができるようになりました。

次ページは男性不妊の最新治療事情をご紹介! >>
 

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