歩け。歩け。一万歩。
(c)KAWAI Katsuyuki 2010
2000年1月1日から2010年3月31日までに米国で行われたすべてのマラソン大会(ハーフマラソンも含む)の医学データを分析したところ、25万人のランナーに対し1人の死亡例ということで、とてもリスクが低いこと分かりました。しかも、その多くが先天性心疾患によるもので、糖尿病によるような心臓病ではなかったのです。
初心者のつもりで運動療法を見直そう
糖尿病があってもマラソンだって大丈夫と言われても、運動不足で過体重の2型糖尿病者は途方に暮れますね。まず、すべては健康的なライフスタイルに変えようと心に決めることから始めましょう。○ 目標を立てる どんなエクササイズでもいいのですが、成り行き任せではいつの間にか元の生活に戻ってしまいます。小さな目標を立てましょう。朝の空腹時血糖値を下げたいとか、1ヵ月で1kg減量しようとか、結果が見えるものがお勧めです。小さな目標ですから達成しやすく、無理なく続けることが出来るでしょう。
○ 欲ばらないこと 5000m競争やマラソンなど激しい運動を求められているのではありませんから、ささやかにスタートしましょう。毎日15分のエアロビクスでもいいのです。早足のウォーキング、自転車、ジョギングなどもOK。少なくても10分以上の運動なら効果があります。週3回で10~15分のエアロビが続けられるようになればしめたもの。少しずつ時間と回数を増やしていけば、毎日30分間のエアロビックエクササイズが実現します。
○ 筋肉を意識する すべてのエクササイズに筋トレを組み合わせます。ダンベルなどで負荷をかけなくても筋肉を鍛えることが出来ます。椅子にすわって片足を交互にゆっくりと上げるだけでも10~15回も繰り返せば筋肉を意識できます。専門家から指導を受ければ、どの筋肉を意識して行うかがよく分かります。
○ ストレス解消にも 糖尿病マネージメントは時にとてもストレスを感じることがあります。努力しても結果が出ないことも珍しくありません。太極拳やヨガは体のバランスや柔軟性を高めるだけでなく、ストレスコントロールにもお薦めです。
○ 難易度をアップ! 家の近所を週4回、45分も歩けるようになれば少しレベルを上げるタイミング。筋肉に新しい負荷をかけてもいい時期です。速歩3分に通常のウォーキング2分のインターバルを入れるのも一つの方法。また、ジムに出入りして新しい技術を会得しつつ、気の合うエクササイズ仲間をつくるのも楽しいものです。
○ エクササイズ フィップ(exercise whip)に注意 1型糖尿病の人は特に起こりやすいのですが、エクササイズの後に急に血糖が上昇してインスリンの追加が欲しくなるようなことがあります。これを「エクササイズ フィップ」といいます。
昼に強いエクササイズをすると、深夜でも筋肉のブドウ糖の取り込みが続いて低血糖になることもあるので、エクササイズ直後の高血糖は少なからず混乱します。
フィップ(whip)とは「急速に動くこと」で、主にホルモンのいたずらです。かなり長時間のエクササイズ、あるいは短時間の強いエクササイズを行うとアドレナリンなどの血糖を上げるホルモンが分泌されて、一時的に(時には数時間にわたって)血糖が高くなることがあります。
1時間後に血糖測定をして再確認するのがルールですが、短時間の激しいエクササイズと長時間の弱い、あるいは中程度のエクササイズを組み合わせることで、このエクササイズ フィップを和らげることが出来るとされています。
○ 低血糖に備える エクササイズ中に、あるいはエクササイズが終わった数時間後にも低血糖になることがあります。血糖測定器具とブドウ糖の準備を忘れずに。必要なら事前にスナックを摂取しておきます。経験と担当医のアドバイスで上手に管理しましょう。
さて、運動療法に積極的に取り組むことでHbA1cが若干悪くなることがありますが、目標レンジ(一般的にHbA1cが7%未満)に収まっていれば問題ないと思います。
体の筋肉や関節を痛めずに十分なエクササイズをしていても、どうしてもHbA1cが悪くなってしまうのなら、それは運動療法のしすぎではなくて、薬の用量や種類の見直しの時期かも知れません。2型糖尿病はゆっくりと進行する病気なのですから。
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