骨髄異形成症候群とは

造血機能に異常をきたす内科疾患で、骨髄で造血機能が無効な機能の細胞産生を引き起こす疾患群のこと。骨髄異形成症候群の患者は貧血を合併し頻回な輸血が必要となり、骨髄は機能不全となります。3人に1人の割合で急性骨髄性白血病に進行します。

骨髄異形成症候群の頻度・性差・年齢

高齢者に多い病気で、発病率は70歳以上の人口10万人あたり1年間に15人といわれています。おおむね70歳前後で発病します。50歳以下の発病は非常にまれです。男性が女性より多く発病します。

骨髄異形成症候群の症状

骨髄機能が低下するため以下の症状で発病します。
・貧血……疲労感、息切れ、胸痛。
・好中球減少……感染症にかかり易くなること。
・血小板減少……出血しやすくなること、皮下出血がよくみられること。
・脾腫……機能の低下した赤血球、白血球などが脾臓で壊されるため腫大する。

骨髄異形成症候群の診断

■末梢血液採血……貧血、白血球減少、血小板減少などがみられます。

■骨髄検査……原則として過形成、異形成、時に低形成などの骨髄細胞が認められます。
骨髄検査

骨髄異形成症候群の骨髄検査での顕微鏡写真。核の異常が認められます。



■染色体検査……第5染色体長腕の欠損、第20染色体長腕の欠損など様々な染色体異常がみられます。
第5染色体

第5染色体の長腕が欠損しています。


第20染色体

第20染色体の長腕が欠損しています。


骨髄異形成症候群の分類

骨髄異型性症候群に対して現在使用されている分類は以下のWHOの分類です。

■不応性貧血……芽球が末梢血で1%未満、骨髄で5%未満であり、環状鉄芽球を持たないもの。白血病化は約10%です。

■鉄芽球性不応性貧血……環状鉄芽球が全赤芽球の15%以上を占めるもの。環状鉄芽球とはミトコンドリアに鉄が沈着し、プロシャ青染色で鉄顆粒が核に沿って核周の1/3以上に環状に配列したものです。

■多血球系異形成を伴う不応性血球減少症……不応性貧血のうち、明瞭な形態学的異形成が10%以上に多血球にわたって見られるもの。白血病化は15~20%です。

■多血球異形成を伴う鉄芽球性不応性貧血……鉄芽球性不応性貧血のうち、明瞭な形態学的異形成が10%以上に多血球にわたって見られるもの。白血病化や生存期間は多血球系異形成を伴う不応性血球減少症とほぼ同じです。

■芽球増加型不応性貧血……骨髄で芽球が5%を超えるか、末梢血で1%を超えるもの。

■5q-症候群……染色体異常として5q-を有するタイプ。不応性貧血に類似するが、巨核球が小型で単核であるという特徴があります。最も白血病になりにくいです。

■分類不能型骨髄異形成症候群……上記のいずれにも属さないもの。顆粒球系にのみ異形成が見られるものなどです。

骨髄異形成症候群の原因

骨髄異型性症候群の原因として、放射線、ベンジン、抗がん剤と放射線治療の組み合わせなどが指摘されています。

骨髄異形成症候群の予後 

治療開始のための準備として国際予後スコアリングシステム(IPSS)が使用されています。これは、骨髄中の芽球の割合、染色体異常の種類、血球減少の種類の3項目を点数化したシステムです。

■骨髄中の芽球の割合
・5%未満 0点 
・5-10%未満 0.5点 
・10-20%未満 1.5点 
・20-30%未満 2.0点

■染色体
・良好群:正常核型 -Y  5q欠損 20q欠損 0点
・中間群:良好群でなく不良群でもない核型 0.5点
・不良群:複雑核型(3種類異常の異常) 7番染色体の異常 1点

■血球減少
貧血(ヘモグロビン<10g/dL) 、好中球減少(1800/μL未満)、血小板減少(100000/μL未満)の3種類の血球減少のうち、
・0項目ないし1項目を満たす 0点
・2項目ないし3項目を満たす 0.5点

上記3項目の点数の合計で予後の判定を行います。

Low……0点
Int-1……0.5-1.0点
Int-2……1.5-2.0点
High……2.5点以上

診断後の生存期間の中央値ですが、

Low……5.7年
Int-1……3.5年
Int-2……1.2年
High……0.4年

という報告があります。いずれにしても予後不良の疾患であることがわかります。
 

骨髄異形成症候群の治療法

■予後良好群(IPSSのLow、Int-1となった場合)
症状が強くない場合、経過観察としますが、血球減少で治療が必要となった場合、免疫抑制療法、分化誘導療法の治療を行います。若年者では病気の進行に備えて造血幹細胞移植のためのドナー検索を行います。

●支持療法
貧血に対しては輸血、血小板減少に対しては血小板輸血が行われます。

●免疫抑制療法
・ネオーラルを4mg/kg、1日2回朝食後夕食後に服用します。1カプセル(50mg)で466.5円と非常に高価です。後発薬は1カプセル244円から317円と多少安価です。副作用は、腎障害、高カリウム血症、肝障害、肝不全、感染症、進行性多巣性白質脳症、BKウイルス腎症、急性膵炎、溶血性貧血、血小板減少、横紋筋融解症、悪性リンパ腫、悪性腫瘍などです。しかしこのネオラールは有効な薬剤ですが、骨髄異形成症候群には保険の適応が認められていません。

●分化誘導療法
副作用が少ないため高齢者でも治療可能です。
・グラケー(15mg)を3錠、1日3回に分けて服用します。1錠35.9円と比較的安価です。後発薬は19.6円から20.9円とさらに安価です。副作用は、胃部不快感、腹痛、下痢、悪心、嘔吐、口内炎、食欲不振、発疹、掻痒、頭痛、めまい、ふらつき、肝機能障害、高血圧、動悸、浮腫、頻尿などです。この薬も骨髄異形成症候群には保険の適応が認められていませんが、骨粗鬆症に対しての治療としては保険が認められます。
・アルファロール(1μg)を1-3錠、1日1回服用します。1錠82.7円です。後発薬は9.8円から19.3円と非常に安価です。副作用は、下痢、悪心、嘔吐、口内違和感、食欲不振、発疹、掻痒、頭痛、めまい、ふらつき、肝機能障害、黄疸、軽度の血圧上昇、動悸、浮腫、急性腎不全などです。この薬も骨髄異形成症候群には保険の適応が認められていませんが、骨粗鬆症に対しての治療としては保険が認められます。

■予後不良群(IPSSのInt-2、Highとなった場合)
年齢や全身状態を考慮し、可能であれば造血幹細胞移植を検討します。現在移植の適応は55歳以下とされていますので、全員に可能な治療ではありません。

●造血幹細胞移植
骨髄異形成症候群に対して唯一の根本治療です。

●化学療法
骨髄のドナーがいない場合、高齢で移植が難しい場合にはこの治療を行います。
・ハイドレアを500-2,000mg、1日1回服用します。1カプセル(500mg)で324.2円と非常に高価です。後発薬はありません。副作用は、骨髄機能抑制、間質性肺炎、皮膚潰瘍、下痢、腹痛、口内炎、食欲不振、胃炎、嘔気、嘔吐、便秘、ビリルビン上昇、GOT上昇、GPT上昇、腎障害、発疹、色素沈着、脱毛、爪変形、掻痒、頭痛、しびれ、発熱、倦怠、浮腫などです。しかしこのハイドレアも有効な薬剤ですが、骨髄異形成症候群には保険の適応が認められていません。
・ビダーザを75mg/m2(体表面積)、1日1回皮下投与を7日間連続して行い、その後3週間休薬します。これを1サイクルとして投与を繰り返します。1バイアル(100mg)が4万9,983円と非常に高価です。後発薬はありません。副作用ですが、好中球減少、血小板減少、白血球減少、赤血球減少、リンパ球減少、敗血症、肺炎、脳出血、消化管出血、眼出血、血尿、間質性肺炎、心房細動、心不全、ショック、アナフィラキシー様症状、肝障害、黄疸、腎不全、尿細管アシドーシス、低血圧などが重篤な副作用で、それ以外でも軽微な副作用が多く認められます。現在保険の適応が認められている骨髄異形成症候群に対する化学療法はこの薬だけです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項