【第1位】
濃密なのに透明。ひと粒ごとに生命が伝わる音
パイオニア久々の純オーディオ仕様ハイエンド パイオニア SE-MJ591
パイオニアが久々に送り出す、純オーディオの魂を渾身に注ぎ込んだヘッドホン。じつはパイオニアはヘッドホンの名門で、1970年代を代表する名機「モニター10」や80年代の名機「SEシリーズ」は私も愛用していました。エネルギーがたっぷり詰まった弾むようなサウンドは、ジャズやロックにピッタリ。近年DJ用ヘッドホンで人気を集めてきたのも、このしっかりした音作りの歴史があってこそでしょう。最新モデルのSE-MJ591は、その歴史を紡ぐのにふさわしいサウンド。低音から高音まで、すべての音が、まるで肉汁たっぷりの和牛のように濃密です。ただし、コテコテに飾ったくどさではありません。音に一切の雑味やトゲトゲしさがなく、表現自体はやや控えめで品格のある、いわば大人の佇まい。同じ和牛でも、高級ステーキ店のレアステーキではなく、日本料理店でいただく鉄板焼き、なイメージでしょうか。
低音から高音まで、しっかりと味わうことができる
引き締まった低音は、モタ付きも腰くだけも感じさせず、音がありのままにスーッと出てくる頼もしさ。弾むようなしなやかさとカッチリした輪郭を両方表現できているのは見事だと思います。
対して中高域は、音のキレ味や迫り来る緊迫感よりも、ニュアンス表現たっぷりに聴かせるタイプ。音が広がる範囲(音場)はそれほど広くなく、スカッと抜けきった青空のような爽やかさもまずまずレベルに止まります。
なのですが、ボーカルもアコースティック楽器も表情が立体的で血が通っています。藤田恵美のデスペラードなどは、ハッとするくらいの憂いと艶やかさにうっとりしました。いちばん驚いたのは、佐倉紗織のVanille Rougeのような高音にキャラクターが乗りすぎている録音の曲でも、ヒステリックにならず大音量で聴けたことですね。
使いやすさ、堅牢性、携帯性なども、さすがDJ用やポータブル用を多く送り出してきたパイオニアらしい作り込み。ふた昔前のiPod nanoのような、ヘッドホン駆動力にややひ弱さがある機器に直接つないでも、キチンと鳴らし上げてくれました。
【関連サイト】
・パナソニック RP-WF7
・シュア SRH1440
・ソニー MDR-MA900
・AKG K550
・パイオニア SE-MJ591