11年間値上がりし続ける金。価格上昇には理由がある
昨年9月にはドル建ての国際金価格が1900ドル(1トロイオンス=約31.1gあたり)を突破、史上最高値を更新した金。このところは1600ドル前後の値動きとなっています。買い時なのか。それとも、バブルが崩壊してしまったのか? 金投資について気になるポイントを金の動向に詳しい金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎さんにうかがいました。Q ここ数年、金で儲けたという話をよく聞きます。
そもそもなんでこんなに値上がりしたのですか
亀井さん 金価格は2001年ころから11年間、ほぼ一貫して値上がり続けています。ここまで金が買われる最大の理由はその希少性にあります。これまでに採掘された金の量は約17.1万トン。オリンピックプールの水が純金だとすると1杯で5万トン。ちょうど、3.5杯分になります。1グラム4500円とすると時価総額で約770兆円。840兆円の日本人の現預貯金で、買占めできてしまう程度でしかありません。
亀井幸一郎さん マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役。金融・貴金属アナリスト。金融市場から国際情勢まで幅広くウォッチしている。近著に「金はどうして騰がるのか」(共著・宝島社)など。
ターネットバブル崩壊、新興国の成長など世界経済の構造変化によって流れの変わったお金が、金に向かっていったのです。
2003年頃まで金のおもな買い手は一部の年金基金やファンドでした。そこに経済成長したインドや中国が大きな買い手として入ってきた。さらに、サブプライムやリーマンショックで、株や債券はもう信用できない、という欧米投資家のお金が入ってきた。これで1000ドルを超えたところに欧州の金融危機。ドルもユーロもダメだ!と一気に1900ドルを突破したのです。
金価格の上昇ではなく、ドルの値打ちが下落している
Q そこまで上がり続けるということは『金バブル』なのではないですか?亀井さん 金の価格が上がり続けているというよりも、米ドルの価値が下がり続けているといったほうがよいでしょう。欧米ではサブプライムショック以降、深刻な経済状況が続いています。たちの悪い不景気を退治するためには経済の血液である「お金」を回さないといけません。そのためゼロ金利政策のほか、米国ではQE1、QE2といわれる金融緩和策で合計210兆円ものお金を刷って市場に流しました。お札が増えるとどうなるか。金価格の上昇は逆に表現すると、ドルの価値が薄まり、1万ドルで買える金の量がどんどん減っていることを表しているのです。
さらに2009年ごろから、進行国の中央銀行が外貨準備として米国債を売って金に替えている。こういった買い手は投資家ではないので、売らずに長期で保有します。ドルの価値下落と中央銀行の買い。バブルとは異なりますね。
Q とはいえ、最高値を付けた後は1500ドルまで下落。
最近も1500-1600ドル前後で落ち着いているのはなぜですか?
亀井さん 先述のとおり、金の価格は米国や欧州、世界経済の状況と密接な関係があります。少し米国の経済が落ち着き、欧州の債務危機もいったんは回避。金価格も一服しているのです。なお、1500ドルより下がらないのは、その近辺で中国などの新興国や、どこかの中央銀行が買っているのではないかと推測されています。
※まだ金は上がる? 次ページでは今後の金価格の見通しをお聞きします!
監修/亀井幸一郎(貴金属アナリスト)