資産運用

実際に運用をしなくとも運用のプロになる?(2ページ目)

AIJ問題でよく分かるのは「運用のプロ」という言葉をきちんと定義できている人は少ないということです。実際に運用をしなくても運用のプロになることは必要です。「運用のプロ」について考えてみます。

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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年金運用のマネジメントを行うプロに必要な資質とは何か

それでは、「年金運用のマネージャー」としてのプロは、どんな資質が求められるでしょうか。たとえば以下のような能力が必要と考えられます。

複数の投資対象、金融商品、投資手法に関する基礎的な理解のあること(特に最新の商品について情報収集する意識が求められる)

個別の銘柄選びや売買タイミングではなく、複数の運用機関・運用商品を選定し、また資産配分を行う能力

運用機関の運用報告を受け、期待していた運用が行えているか分析・評価する能力(単純にリターンがプラスならよいとは限らない)

運用資産全体のとるべきリスク度合いや、ねらうリターンの程度を検討し、全体として運用管理をしていくマネジメント能力

運用の方針、結果について、企業年金の関係者に対して説明を行う能力(プロセス責任を果たすことが重要)

自分に能力が不足している部分を自覚し、適宜アウトソース(コンサルティング会社を雇うなど)したり、自己研鑽(企業年金連合会の研修を受けるなど)する能力

これらはいずれも「運用の実行のプロ」ではなく「運用マネジメントのプロ」としての能力です。企業年金の運用担当者(運用執行理事あるいは常務理事が担当する)は、個別の銘柄や市場の動向に通じる必要はないのです。むしろ、そうした「運用のプロ」を使いこなす能力が求められるのです。

これはつまり、名選手ではなく、名監督になることを目指す必要がある、ということです。名選手=名監督ではないことは誰でも知っています(落合氏のように名選手であり名監督である人もいますが)。監督は、監督としてのスキルを身につけるように、「年金運用マネジメントのプロ」は運用マネジメントのスキルを身につけれることが必要なのです。

個人においても同じ。個別運用のプロより、運用マネジメントのプロになりたい

こうした考え方は個人の資産運用にも通用するように思います。

私たちはついつい、「個別の売買方法のセミプロ」を目指してしまいます。「株のデイトレードを極めよう」とか「為替の機微を知り、FXで稼ぐトレーダーになろう」というのが運用だと思っています。しかし、個人の運用においては、それだけではないはずです。

今説明したとおり、私たちは、選手ではなく監督を目指すべきです自分の保有する資産全体を管理し、リスクを取って運用する資産の配分を決定し、さらに投資対象ごとの投資割合を考え、個別商品の選択、売買を行っていかなければなりません。(もっと広く言えば、しっかり稼いで、しっかり家計を管理し、貯めるところも監督していくことが必要です)

具体的には、預貯金だけでなく、債券や株式を投資対象に組み入れ全体として管理し、海外にも投資対象を広げるようなマネジメントの力が必要ということです。投資信託で運用する、というと素人のようなイメージがありますが、投資対象を世界に広げ、あるいは新興国やベンチャー企業も投資信託を通じて投資しているのであれば、これは立派な「運用マネジメント」です。むしろリスクを分散させる手法として投資信託が有効活用されているといえます。その結果として、リスクを抑えつつ、リターンを獲得していく選択肢が得られれば、「運用マネジメントのセミプロ」といっていいでしょう。

■   ■

年金運用においても、「運用マネジメントのプロ」を育成することが実はとても重要です。そうした本質の議論が行われることに期待したいところです。

「運用のプロ」というもっともらしい言葉こそ、実は問題解決から遠ざかる言葉なのかもしれません。
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