資産運用

実際に運用をしなくとも運用のプロになる?

AIJ問題でよく分かるのは「運用のプロ」という言葉をきちんと定義できている人は少ないということです。実際に運用をしなくても運用のプロになることは必要です。「運用のプロ」について考えてみます。

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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「運用のプロ」という言葉に少し注目してみたい

AIJ投資顧問会社の年金資金の消失問題は、いろんな論点提起を起こしつつ、少しずつ収束に向かっています。民主党ではプロジェクトチームで今後のあり方について議論をしていますし、厚生労働省でも有識者会議を設け、企業年金の制度の課題を議論しています。

このとき少し注目してほしいキーワードがあります。それは「運用の専門家」とか「運用のプロ」という言葉です。実はこの言葉が意味しているものはきわめて曖昧です。言葉のパーツの意味は分かるのですが、具体的にそれが何を意味しているのか定義しようとすると、誰もその明確化ができなかったりします。

例えば厚生労働省が厚生年金基金(今回のAIJの被害が多かった企業年金のひとつ)の常務理事について行った調査について「運用に関する資格を保有しているか」というものがありました。おそらく企業年金の運用担当者は、運用の専門家として専門知識を有するべきという考えでしょう。そこでは「ファイナンシャル・プランナー」「証券アナリスト」などが資格としてあげられており、有資格者はわずか2%と報じられました。

しかし考えてみると「ファイナンシャル・プランナー(FP)」は企業年金の運用責任者の持つ資格としてはあまり適当ではありません。FPは個人や中小企業のお金のアドバイザーとしての知識であって、数十億円から数千億円の年金運用のマネージャーのための資格として想定されているわけではないからです。「証券アナリスト」も同様で、金融機関の職員で実際の運用業務にタッチする人が多く持っている資格ですが、企業年金の運用執行理事は、自分で株を売り買いするわけではありません。いくつもある運用機関を束ねて、全体として運用の管理をするのが仕事です。やはり「企業年金運用の専門家」としての資格ではないと思います。

また、企業年金の常務理事が「天下りが多い」と強く批判されていますが、前職で金融機関にいればいい、というものではありません。実は「企業年金運用の専門家」としてほとんど意味がないことも多いのです。例えば銀行の支店長、証券会社の営業(AIJの社長は元は証券会社の営業マンです)は、年金運用の担当者として過去の経験はまったく役に立たないでしょう。前職がファンドマネージャーであっても、自分の運用経験のある商品以外については必ずしも専門ではありません。「企業年金運用の専門家」は全ての投資対象を視野にいれ、様々な投資方針をもつ運用会社をマネジメントしていかなければなりません。

要するに「運用の専門家」とか「運用のプロ」という人材像は、きちんと定義されず、失敗した人だけがとにかく非難されている状態にあるのです。

それではどのような人が「年金運用のプロ」に当たるか。それは個人の運用の参考にもなります。次ページへ
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