2011年6月に惜しまれつつ74歳で急逝した建築家、伊丹潤氏は日本と韓国の二つの国の境界に立ち、建築だけには留まらず、現代美術、書などの作品を遺し、韓国李朝文化にも精通した孤高の建築家でした。
本展ではデビュー作「母の家」(1971年)から逝去後の現在も進行中の韓国でのプロジェクトまで24の建築作品を紹介しています。
会期:2012年4月17日(火)~6月23日(土)
日曜・月曜・祝日休館 11:00~18:00(金曜日のみ19:00まで)
入場無料
会場:TOTOギャラリー・間 東京都港区南青山1-24-3
TOTO乃木坂ビル3階
主催:TOTOギャラリー・間
企画:TOTOギャラリー・間運営委員会
お問い合わせ:TOTOギャラリー・間 TEL.03-3402-1010
3階は韓国・済州島の作品を中心に展示
会場を入るとまず目に入るのが、会場を2つに分ける細いスリットのある大きな間仕切り壁。伊丹氏のプロフィールが掲げられ、裏にはドローイングが掛けられています。ここには亡くなる前の約10年間を費やして実現させてきた韓国・済州島の作品を中心に展示しています。間仕切りも、三つの美術館「風」の外壁を再現したもの。
入念に描き込まれたドローイングや精緻な模型を眺めながら会場を一周すれば、氏の韓国での仕事の全貌を知ることができます。
1. 会場の入口。
2. 3階は大きな間仕切り壁が会場を2つに分けている。
3. 正面には済州島の作品の位置を表した地図が展示されている。
4.「三つの美術館」(2006)左から「石」「風」「水」。
大きなテーブルを埋め尽くす「手の痕跡」
会場を出た中庭には水が張られ、韓国・済州島の「ゲストハウスPODO HOTEL」(2001)の大きな写真が掲げられています。中庭の外階段を上がった先の4階には、デビュー作「母の家」から晩年に至るまでの作品を展示しています。
中央に置かれた大きなテーブルには、伊丹氏が遺したスケッチがびっしりと敷きつめられていて、真ん中には200分の1のスタディー模型が箱詰めになって置かれています。壁にかかったドローイングと共に、これらも全て伊丹氏の「手の痕跡」として構成されています。
正面の壁には2003年のフランス・パリの国立ギメ東洋美術館での個展の際に制作された映像が流され、作品の動画と氏のインタビューを見ることができます。
また会場のコーナーには晩年の書斎の様子が再現されています。机には死の2日前まで描いていたスケッチが置かれ、現代美術家としての絵画作品や李朝の骨董のコレクションからも、氏の多彩な才能が垣間みえます。
1. 水が張られた3階の中庭。
2. ガラス面に三つの美術館「風」の壁を再現。
3. 再現された書斎の様子。椅子は伊丹氏のデザイン。
4. 箱詰めにされた紙のスタディー模型。
5. スケッチが敷き詰められた大テーブル。正面は伊丹氏のインタビュー映像。
シンポジウム「伊丹潤・ひらかれる手」を開催
5月17日(木)には、二人の建築史家と伊丹氏の遺志を継ぐ二人の建築家によるシンポジウム「伊丹潤・ひらかれる手」が開催されます。グローバルな視点で建築・美術界を見続けてきた三宅理一氏と、現代建築を鮮やかに論ずる新進気鋭の倉方俊輔氏と、会場の展示構成に当たった、伊丹氏の長女で韓国での共同設計者でもあるユ・イファ氏と、同じく伊丹潤・アーキテクツ設計室長の田中敏晴氏が、これまであまり語られることのなかった伊丹氏の思想と作品を解き明かします。
この機会にぜひご参加ください。