ありそうでなかった下北沢の夜カフェ

19坪の店内に並ぶのはすべてソファ。

19坪の店内に並ぶのはすべてソファ。

2012年3月、下北沢南口商店街の小さなランドマーク、自家焙煎豆販売ショップ「コーヒーモルディブ」の入っている古びたビルの2階にカフェが誕生しました。

オーナーは元会社員で、仕事のかたわら役者として小劇場の舞台に立っていた松本さん。カフェを開くにあたって演劇とゆかりの深い街、下北沢の心に響く物件を選び、渋谷や恵比寿で「アナログ」をはじめ人気カフェを多数手がけるattic planningにプロデュースを依頼しました。

物語のあるカフェ作り

窓辺の一角にはミシンとトルソが置かれ、「お針子さんの部屋」に。

窓辺の一角にはミシンとトルソが置かれ、「お針子さんの部屋」に。

attic planningの五味美貴子さんに、カフェのコンセプト作りと内装についてのお話をうかがいました。
「オーナーからのご依頼は、とにかく自由に遊んでください、ということ。もともとattic plannningのカフェをお客さまとしてよくご利用くださっていたのです」

五味さんがブリキボタンのために考えた物語はロマンティックです。女の子が坂をのぼってきて、たまたま古い洋館をみつけて入ってみたら昔のアトリエだった……というのが物語の骨格。
「そのアトリエはいろいろな人々に使われていました。たとえばお針子さんだったり、画家、役者さん、時計職人、科学者、数学者、音楽家、探検家など。一人ずつがアトリエに小さなコーナーを持っていたのです」

洋館のアトリエをイメージして

ガーネット色のカーテンで仕切られた小部屋は、昔の劇場に見立てて。

ガーネット色のカーテンで仕切られた小部屋は、昔の劇場に見立てて。

ブリキボタンの内装は、アトリエを使う架空の人々のために各コーナーを演出しながら作りあげられました。たとえば店奥の一段上がった小部屋は、役者さんのコーナーとして「芝居小屋」に。明るい光の射しこむ「画家」のコーナーや「お針子さん」のコーナーとは対照的な、夜の匂いがたちこめる一角です。

古い時計の部品がディスプレイされた「時計職人」のコーナー。奥に「芝居小屋」があります。

古い時計の部品がディスプレイされた「時計職人」のコーナー。奥に「芝居小屋」があります。

科学者のコーナーには顕微鏡。音楽家のコーナーにはアコーディオンやアナログレコード。どのコーナーも古雑貨や古道具を集めて魅力的に仕上げられていて、架空のアトリエ使用者たちへの想像力をかき立てられます。

いくつもの小さな古い物語が交錯し、若く新しい物語を生みだしていくような楽しげな空気感。それはいかにも下北沢にふさわしい、と言えそうです。

次ページでブリキボタンのメニューをご紹介しましょう。