未来を見据えて、新たなトライ
若者のクルマ、バイクブームと共に隆盛を誇った1980年代、90年代の日本のモータースポーツ。それから20年の時を経て、現在も数多くのモータースポーツが鈴鹿サーキットでは開催されている。モータースポーツ競技が開催される週末は30週末以上もあり、これは世界的に見ても圧倒的なレース数である。しかし、現状を見てみると、ブーム期に比べて出場台数は大幅に減少し、選手やオフィシャルの年齢層の高齢化も著しい。若者のクルマ、バイク離れは今に始まったことではないが、現状は先細りを続ける厳しい状況にあると言っていい。
その現状を打破するべく、10年以上前から鈴鹿サーキットでは「子供」「子供をもつ親」をターゲットにしており、遊園地でもモータースポーツに絡めた様々なアトラクションを毎年導入している。
子供が気軽に乗れる本格的なレーシングカート「コチラレーシングカート」この春からは乗り物パスポートで体験できるようになった。
【写真提供:MOBILITYLAND】
電動バイクやゴーカートのアトラクションは特に子供たちに大人気で、それとともにマスコットキャラクターのコチラをレーサー風に仕立てた「コチラレーシング」の企画で子供たちにモータースポーツを身近に感じてもらう努力を続けている。
フォーミュラニッポンのグリッドでボードを持つ係を子供たちに体験してもらうグリッドキッズの企画。子供たちにとっては、大きな刺激になる体験だろう。
【写真提供:MOBILITYLAND】
また、未来を見据えてという意味では、鈴鹿サーキットは今後の代替エネルギーを活用したクルマ、バイクの競技開催にも積極的である。1992年から毎年夏に「ソーラーカーレース」をFIAイベントとして開催しており、昨年で20回目を数えるイベントに成長した。
伝統のソーラカーレース 【写真提供:MOBILITYLAND】
そして、昨年からはパナソニックの充電式電池のエボルタを動力源とする車両の競技「Ene-1 GP(エネワンジーピー)」を開催。これまで燃費競技に参加してきた学生チームも多く参加し、今までのレースとはまた異なる趣向と意味合いをもつサーキットイベントとしての成長が期待されている。
Ene-1 GP 【写真提供:MOBILITYLAND】
エコロジーに関心が集まる時代を反映したイベントといえるが、こういったイベントはやがてやってくる電気自動車の時代に向けて、技術者たちが独自のアイディアを生み出す場にもなるし、サーキットに縁もなく興味を示す事もなかった若者や学生たちにサーキットという場を使った競技に目を向けさせる意味合いもある。
現行のモータースポーツは以前と比べて厳しい状況下にはあるが、この50年を振り返ってみると、高速道路さえもなかった時代に鈴鹿サーキットは生まれ、栄光と挫折、挑戦と試行錯誤を繰り返し、現在も未来を見据えた挑戦と努力を続けている。
鈴鹿サーキット 【写真提供:MOBILITYLAND】
とかく、マスコミの報道はF1日本グランプリの行方ばかりに目を向けがちだが、実際のモータースポーツの現場はこれまでの歴史同様に「未来に向けた歩み」を止めてはいない。ここに誰も考えつかないアイディアを持った若者達がたくさん参加してくれるようになれば、明るい未来の兆しは必ず見えて来るだろうし、彼らの手で次の時代が作られて行くことになるだろう。これからの50年もずっと鈴鹿サーキットはトレンドセッターであって欲しいし、今後のチャレンジにも大いに期待したい。
鈴鹿サーキット開場50周年サイト