玄鳥来る:4月5日~9日頃
画像はイメージです
軒燕古書売りし日は海へ行く(寺山修司)
店じまひしたる米屋の燕の巣(塩谷康子)
春雨(はるさめ)/春雨とは、加茂川に霧のように降る、こぬか雨だといいます。新国劇「月形半平太」の「春雨じゃ、濡れて参ろう」の春雨は、霧のように周囲から押し上げてくる。だから傘を差しても無駄だと言うことらしい。一雨ごとに暖かさが増し、野山に瑞々しい春の色を運んで来ます。
春雨や土の笑ひも野に余り(千代女)
春雨や友を訪ぬる想ひあり(良寛)
雁北に行く:4月10日~14日頃
南から燕が訪れ、雁が北に帰っていく季節。一羽を先頭に、鉤(かぎ)になり竿になり飛んでいく様を「雁行雁陣(がんこうがいじん)」とも。その姿は何か、別れの寂しさや日本の田舎の失われた情趣がありますね。ちなみに「残る雁」の季語もあり、こちらは病気や怪我のためか帰れない雁に侘びしさを見たもの。雁よ雁いくつのとしから旅をした(一茶)
行く雁の先陣は火の雲のなか(鷹羽狩行)
浅蜊(あさり)/潮干狩りのシーズンです。お節介ながら七つ道具を。まず手カギですね。採った浅蜊を入れておく篭。海水を入れるペットボトル。浅蜊と海水を入れて持ち帰るクーラーボックス。乾いたタオル。長靴。UV対策用帽子。軍手。できれば、iPodといったところか。
潮干狩夫人はだしになり給ふ(日野草城)
浅蜊椀無数の過去が口開く(加藤楸邨)
虹始めてあらわる:4月15日~19日頃
鮮やかな虹が見え始める時季。雨の後の土の香りと一緒に、ダイナミックな天空のアーチを眺める。田舎暮らしならではの、やがて来る夏の兆しです。朝虹が西に出れば雨、夕虹が出れば晴。知ってました?虹消えて小説は尚ほ続きをり(高浜虚子)
キャスリン・バトル虹立つやうに唄ひたり(細見綾子)
紫雲英(げんげ)/一般にはレンゲ草と言った方が馴染み深いですね。田植え前の田圃に咲く花の絨毯。でも花が咲くとすぐに、肥やしにするため耕耘機で鋤きこんでしまうのが、なんとも残念。
手帖又落すげんげに寝ころべば(阿波野青畝)
げんげ田に指より還る少女の日(奈良葉)
葭始めて生ず:4月20日~24日頃
水辺に葭(あし)の芽吹きが見られる時季。芦、葦、蘆とも同じ意。世界で最も広範囲に分布している植物ですね。水ぬるむ季節の到来です。蘆の日に日に折れて流れけり(闌更)
物の名を先づ問ふ蘆の若葉かな(芭蕉)
鱚(きす)/体長は15センチほどの、背の部分は淡青色、腹部は黄白色の地に銀白の線が走る優美な魚です。また姿が美しいだけでなく、味も格別。塩焼きやフライによし、すだち醤油や白焼きなどあっさりと食してもよし。現在では高級魚の最右翼に位置するんじゃなかろうか。
鱚釣りや青垣なせる陸の山(山口誓子)
手に軽く握りて鱚といふ魚(波多野爽波)
霜やみて苗出ずる:4月25日~29日頃
八十八夜の別れ霜で、霜が降るのが終わり、苗代では稲の苗が育っていきます。キュウリ、トマト、茄子などの夏野菜の植え付けもこの頃から。植物の芽吹きの力には驚かされる時季ですね。苗代に満つ有線のビートルズ(今井聖)
苗札のたてこんでゐる幼稚園(高野ゆり子)
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しかし田舎では、古くからその毒性を利用した。葉の煮汁を厠に入れて防虫に、煮汁を薄めて布につけ、牛の体を拭いてシラミやダニを退治していたという。 エライ!
来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり(水原秋桜子)
春深く踵(きびす)を返す馬酔木かな(富安風生)
蝦蛄(しゃこ)/見た目で敬遠して食べない人、あなたは損してる! 英語ではカマキリガニと呼ばれ、ちょっと悪相ですがこれからが旬。是非チャレンジを。それじゃぁ、私の田舎での食べ方をご伝授しましょう。
1.獲れたての蝦蛄を沸騰する大釜に放り込み、グラグラと茹でる。
2.殻の色が紫になった頃が茹であがりごろ。
3.両サイドの足の付け根あたりからハサミでチョッキンして、皮を剥く。
4.アツアツをわさび醤油につけて口に放り込む。
5.卵を抱えた雌に当たったらあなたは幸せ。
6.これを何度も繰り返す。
先生の馬に似し歯や蝦蛄を食ふ(吉岡禅寺洞)
蒸蝦蛄の摩訶不思議なる姿かな(木内彰志)
次回は、五月:菖蒲月。お楽しみに!