神谷院長への質問
1) 今回の移転の意図を教えてください。以前のクリニックが手狭になったこと、患者数が増えて立って待たなければならない患者さんが増えたことにより、ハード面での限界を感じたことが第一です。また、当院で学びたいという若手のドクターが増え、後進の方々が今後も使っていけるような最新設備を備えたクリニックを作らないといけないと思い、今回の移転・新築となりました。
電子カルテです。
2)あれだけIT化を嫌がっていた先生が思い切ったIT戦略に打ち出した理由を教えてください。
やはり若い先生方が来られるにあたり、電子カルテは必須と考えました。ご存知の通り、私はアナログ人間ですが、その考えは改めるべきと今回のIT化を進めました。
電子カルテを導入すると画面を見て、患者さんと向き合って話し合えないというところもあるので、メディカルクラーク(秘書)を置いて、患者さんの情報をつぶさに記録していく体制を整えております。
IT化は医事の説明にもありました通り、予約、受付、会計の部分にまで及んでいます。これにより、医事部門は受付・会計に時間を多く費やすことがなくなり、患者さんへのケアに時間をかけられるようになりました。
受付はコンパクトになりました。
また、これにより、待ち時間を出来るだけ短く、そして効果的に使って頂けるようになったかと思っております。
3) これだけの広さだとスタッフもかなり増えたと思いますが、どんな陣容なのでしょうか?
人数は総勢、61名で単純に以前の2倍になりました。もちろん広さは2倍以上になっていますので、当院としては過去最高の人員となっています。医師も4月には合計5名の常勤体制になります。
4) 新しくなってからの妊娠成績はどうでしょうか?
明らかに患者さんの母数も増えているし、妊娠率は向上しています。新しい施設になったということもあり、みんなのモチベーションも上がっています。
エンブリオロジストの人員も安定しており、現在8名のスタッフがおります。受精率や変性率などの成績のバラつきが以前よりも少なくなりました。
三階入口近くにも安田氏のオブジェ
凍結胚移植を積極的に行っています。適正なホルモン値環境下での内膜に胚を移植することによって妊娠例は増えている状況です。
5) 札幌の冬場は寒いので患者さんが減るのではないかと思うのですが、どうなのでしょうか?
実は冬の患者さんの方が多いのです。北海道は農家の方が多く、農家の方は冬が最も治療しやすい時期だからです。冬に道内の遠くから来られる患者さんは本当に多いです。
今回、札幌駅に近くしたのもそのような患者さんに少しでも便利の良いようにという気持ちもあります。
6) 最新の設備を作られるにあたり、気を配った点があれば教えてください。
受付・会計についてと一般不妊とARTのフロアーを分けたことは、先ほどお話ししました。培養室はセキュリティの関係で見られませんが、高いクリーン度で骨髄移植でも出来る空気環境にこだわっています。そして、採卵室と胚移植室も別々に作りました。
診察室は5つになりました。
診察室はスタッフ動線と患者さんの動線を分けて、無駄な動きがないように工夫をしました。
そういう細かい事を挙げると多数ありますが、設計前に岡山二人クリニックの林先生や英クリニックの塩谷先生の施設を拝見し、色々と参考にさせて頂きました。
7) 今後の予定をお聞かせください。
北海道で最も大きな不妊治療と高度生殖医療に特化したクリニックとして、量もクオリティも北海道での追従を許さない施設にしたいと思っています。そのためにハードは充実しましたが、今後はソフト面も充実させていく予定です。
体外受精のための安静室です。
患者さんには説明会も自院内で行い、様々な情報発信をこまめに行うようにしてまいります。スタッフの接遇教育もプロの講師の方を呼んで研修をしたり、患者さんへの卵子の受精情報を携帯でお知らせしたりと様々な取り組みも行なっています。
また、近い将来にはクリニックの近くに宿泊施設を準備し、遠くの患者さんが来られても安価で宿泊できるようにも出来ればと思っております。
まとめ
前回、神谷先生のクリニックにオールアバウトとして取材させて頂いたのが2005年でしたので、7年ぶりの記事掲載になりました。あの当時から北海道のオピニオンリーダーとしてご活躍の神谷先生でしたが、今回でまたスケールアップされて、益々、患者さんにとっては心強いクリニックになったと思います。今回、移転して1ヵ月も経たないお忙しい中で取材を請けていただいた神谷院長先生と安藤医事部門長に心より感謝申し上げます。