いきなりの緊急事態
軽い気持ちで調べてみたら、予想外の診断。誰しも驚き、動揺します。
毎日、いろいろと忙しく生活している中で、自分の体調のことはちょっと後回しになることはよくあります。あまりにそういう状態が長く続いたり、症状が耐えきれなくなったりして飛び込んだ病院で、思わぬ病気が発見されるケースも、残念ながら存在します。
それが、がんで、しかも進行したものであったとしたら……? 私ができる精一杯のアドバイスをまとめてみました。
事実と憶測をきちんと区別する
医師の診断が進行がんであったときに、私のような医療従事者も含めて、平静を保てる人はおそらく一人もいらっしゃらないでしょう。ほとんど情報がなかった時代と異なり、最近ではインターネットという協力な武器がありますので、様々な情報を瞬時に手に入れることができます。
種々の検査は、事実を明らかにしてくれます。その上で医師は患者さんにきちんとご説明いたします。
しかし、これはともすれば「情報の洪水」というような状況を起こしかねません。
また、周囲の方も、親切心から様々なアドバイスをしてくださいますが、これが「情報の洪水」に拍車をかけることもあります。
このようにあふれかえる情報の中には、信憑性が低いもの、単なる憶測にすぎないものも少なからずあります。
まずは、事実と憶測を区別して冷静に今何がおこっているのか、何が事実なのかということを把握していただければと思います。
主治医を主軸に据える
今の患者さんの状態を一番知っているのは、がんの診断までこぎ着けてくれた主治医です。「隣の芝は青い」ということわざもありますが、大変な病気が発覚すると、もっと他によい先生がいらっしゃって、その先生にかかれば状況は一変するのではないかと考えるのも当然のことです。
しかし、一番患者さんのことを知っているのは主治医です。他の医師の意見を求めることはセカンドオピニオンとして通常行われていることです。
メーテルリンクの「青い鳥」ではありませんが、まずは、目の前の主治医とじっくり話をしていくことが重要と思います。
患者さんの希望は?
わが国で用いられている補完代替医療のうち、最も多いのはサプリメントです。
患者さんご本人が本当に望んでいることは何でしょうか? 闘病生活の中ではできるだけ悔いを残さないことが重要だと思います。とくに、健康食品やサプリメント、各種療法などがんに対する様々な補完代替医療については、患者さんの希望があれば、できるだけ実現できるように工夫していくことがよいと思います。
もちろん、極端に高価なものや、医学的にどう考えても無理があるというものは、人道的にも止めなくてはなりませんが、そのようなことを医療従事者になかなか相談できないのも事実です。ただ、日本の補完代替医療のほとんどをサプリメントや健康食品が占めているという統計もあります。私はぜひ、街の薬局の薬剤師にも相談してみていただきたいなと思います。
安心できる品質のものがそろうだけでなく、医師から処方されたお薬との飲み合わせなどもきちんとチェックしてくれます。
何より、ご本人、そして、ご家族が納得できる治療を進めていくことが重要です。
受け入れがたい事実を受容する過程を知る
自らの生命の終わりのような、通常は到底許容できないような事実が目の前に出てきたときに、人は様々な反応をします。
精神科医のエリザベス・キューブラー=ロスは、その著作「死の瞬間」の中で、死という事実を受け入れるまでの段階として、否認・怒り・取引・抑うつ・受容という段階を経ると著しました。
もちろんこのような段階をとらない場合もありますが、このような理論を知っておくことで、患者さんとのコミュニケーションもずいぶんかわってくるのではないでしょうか。
いずれにしても、まずは落ち着いて、主治医の先生にご相談するということが大切です。
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