足の動脈が狭くなっているかどうかを調べるABI検査は足病変の予防に大切なものです。
写真:フクダ電子(株) 提供
いいニュースもありましたが、医学医療の進歩が患者一人ひとりになかなか届かない現実も改めて実感しました。
フットケアに取り組んでいる専門医たちも、切断せずに救える足が数多くあることを認識しているのです。
2月10日の「フットケアの日」は高齢者、糖尿病者への啓発だけでなく、日常の診療に従事している全国の内科医、一般医への注意喚起の日でもあるようです。
難しい糖尿病の足病変
糖尿病性の治りにくい傷(潰瘍)の原因は、下肢の動脈硬化が進んでついに閉塞して血液が足に届かなくなった血流障害と、神経障害が進んで感覚が鈍麻して痛みも動きも感知できなくなった場合に生じます。講演者の渥美義仁・東京都済生会中央病院糖尿病臨床研究センター長によると、足潰瘍患者の約50%が神経障害によるもの、約20%が血流障害、そして残りの約30%が神経障害と血流障害を併せ持つ患者だそうです。
とても複雑な病気で、下肢の太い動脈だけでなく、糖尿病特有の細かい動脈が詰まって炎症を起こしたり(喫煙者に多い)、動脈と静脈が短絡して末梢血液が減少したり、さらに静脈性のものもあって、とても内科医や一般医では診断も処置も困難なものです。それに神経障害が悪化して痛みを感じませんから、どうしても手遅れになります。
ですから、どこに行ってもきちんとした治療を受けられず、患者本人も医師もどうしようもなかったのです。最後には命を救うために足の大切断となってしまいます。
いいニュース
フットケア啓発のポスターは、患者から担当医に、足の話題を出しやすくしてくれます。
日本フットケア学会
チーム医療によるフットケア及び足病変に対する予防・治療・教育・研究の増進普及を計り、医療に貢献することを目的として設立されました。
http://footcare.main.jp/
日本下肢救済・足病学会
下肢を救済し、足病の治療・ケア・予防を行い、患者のQOL向上を図るとともに、あらゆる職種、業界が結集し共同で検討し、研究を行い、また下肢救済と足病の治療・ケアとそれらに関わる問題を積極的に取り上げる場として設立されました。
http://www.jlspm.com/
日本フットケア学会のサイトには、嬉しいことにフットケアに取り組んでいる各都道府県の病院の口コミ情報が載っています。
大都市で、糖尿病センターを設置して総合的に糖尿病を管理してくれる病院を除くと、一般医に診てもらっている大多数の糖尿病患者には、「足がつめたい」とか「少し歩くと足が痛くなるが、しばらく休むと痛みが消える」、「何もしていない安静時でも足が痛む」といった進行した末梢動脈疾患の症状が出ても、どこの病院のどの診療科に相談したらよいかが分からなかったのです。
実は担当医もあまり詳しくないと考えたほうがいいのです。
自分の希望を伝えれば担当医から紹介状をもらえるので直ぐに行動しましょう。
本来ならば糖尿病の担当医は足病変治療のキーポジションにいるのですが、日本だけでなく欧米でも患者を抱え込みすぎて悪化させてしまうケースが多いと思います。患者自身が危機意識を持たなくてはなりません。
下肢に開いたきず(創傷)があれば形成外科や皮膚科、整形外科の担当になりますが、まず血行再建をしないとうまくいきません。
血行再建は血管内治療を行う循環器内科や血管外科が担当します。
足のきずは炎症を起こすと急速に進行しますから各診療科の素早い対応が重要です。
靴文化の欧米には足病変を支えてくれるいろいろな専門医がいます。
バルセロナの街中にも「うおのめ」や「たこ」、爪を処理してくれるポドーロゴ(足治療医)の店があって、高齢者がお世話になっています。
アメリカにはポダイアトリストという足病医がいますし、ペドーシストという靴と足の専門装具士が支えてくれます。足病変の再発予防には足を保護する特殊な靴が必要なのです。
高齢社会が進行するわが国でも、障害者に直結してしまう足病の早期治療の連携システムの構築が急がれます。
糖尿病者からも声を上げましょう。
ところで2月10日はフット(foot)の語呂合わせなんですよ。1(ヒィ)2(フゥ)3(ミィ)と数えることが私の子どもの頃はよくありました。で、2(フゥ)10(ト)です。
古いですねぇ……
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