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「即時義歯」とは?抜歯直後から保険適応で作れる仮入れ歯

【歯科医が解説】抜歯してから入れ歯を作るまでの間、歯がなくて困るのを避けるため、仮入れ歯として「即時義歯(そくじぎし)」を使うことができます。保険適応ですが、あまり一般的ではない理由も含め、メリット・デメリットを解説します。

丸山 和弘

執筆者:丸山 和弘

歯科医 / 歯の健康ガイド

即時義歯とは? 抜歯直後に入れ歯が入る仕組み

即時義歯

まとめて抜歯すると審美的に問題が起こることも多い

一般的な入れ歯は、抜歯後2週~6ヶ月間、歯ぐきの形が落ち着くのを待ってから、入れ歯のための型取りを行ないます。しかし「即時義歯」は、抜歯前にあらかじめ型を取って、歯と歯ぐきの模型を作ります。そしてこの模型上で、後日抜く予定の歯を削り取ってしまいます。

つまり実際に存在する口の中の歯は、入れ歯を入れるまでそのままにしておき、先に模型上で仮想的に抜歯してしまうのです。その後、模型で抜歯した状態にあわせて入れ歯を作ります。そして入れ歯を入れる当日に、実際に口の中に存在する歯を抜歯して、すぐに入れ歯を入れるのです。

即時義歯は、歯周病などが比較的進行していて、前歯などをまとめて抜歯の必要があったり、先に抜歯をしてしまうと、入れ歯のバネと言われる固定金具の取り付ける歯が無くなってしまう場合など、ある程度緊急性がある場合が多くなります。もちろん健康保険も使用できます。

<目次>  

即時義歯のメリット・デメリット

■即時義歯のメリット

・時間的ロスがなく審美的回復がしやすい
抜歯してから歯のない状態で数週間といったこともなく、当日に入れ歯が入るため、見た目の変化に悩む心配が最小限で済みます。

・機能面の維持が可能
歯が全くなくて噛めないなどの状況を防止することができます。

■即時義歯のデメリット

・すぐに合わなくなる
抜歯すると次第に歯ぐきが退縮して痩せてきます。そのため入れ歯との間に時間とともに隙間ができ、短期間(1~3ヶ月程度)で緩くなり、合わなくなります。合わなくなった場合には、隙間を埋めるためには、樹脂を追加して修理を行なうことができます。

・痛くなることもある
あくまで模型上で仮に抜歯を行なうため、本来の口の中と一致せず入れ歯があたって痛くなることがあります。
 

保険適応でも即時義歯が一般的でない理由

健康保険が使えて、抜歯直後に入れ歯が入る……。となればとても合理的に聞こえますが、実際にはそうでもありません。入れ歯は高い精度があって、はじめて歯ぐきにしっかり密着し、痛みのない入れ歯ができるのです。即時義歯は模型上であくまで推測で抜歯、さらに抜歯後に歯ぐきが大きく変化してしまうといった、2段階のずれが起こります。そのため1~2ヶ月位で精度に問題が起こることが多いのです。

さらに健康保険が利用できるといってもルールがあります。即時義歯も普通の入れ歯も、基本的に6ヶ月以上使用することを前提としています。合わなくなっても、新しい入れ歯を作り直すことはません。ただし調整や修理などは可能です。

たとえ病院を変えたとしても、健康保険を利用して6ヶ月以内に2つの入れ歯は作ることはできないのです。もし抜歯直後のごく短期間だけ使用し、その後6ヶ月以内に新しい入れ歯を作るとすれば、2つ入れ歯のどちらかは保険の利かない自由診療での対応となります。

このため抜歯の際に即時義歯は作らずに、ある程度期間を空けてから、入れ歯の製作する方法が一般的です。しかし抜歯後の状態をなんとかしたい場合には、リスクなどを納得した上で、即時義歯を製作が可能かどうか通院中の病院で相談することをオススメします。

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