痛みの原因はどこから? 歯髄と呼ばれる神経から伝わる歯の痛み
「ズキッ!」っとする歯の痛みは我慢することが難しいことも…
しかしある一定のラインである閾値を超えた瞬間にいきなり痛みの刺激だけが送られるのです。このとき歯髄が送ることができる感覚は、「痛覚」だけです。
歯の外側にある「エナメル質」は無知覚なため、たとえ削ったりしても、刺激を歯髄に伝えることが出来ません。しかし歯の内部にある象牙質は、歯髄に刺激を敏感に伝えます。例えばむき出しになった象牙質では、約26℃以下の温度で冷痛となり、約48℃以上で温痛になると言われています。
歯の痛みは放散痛を起こしやすく、原因となった歯の周囲に痛みが拡がるため、痛いと感じた場所が手前でも、実際には奥の歯が虫歯だったり、上の奥歯が痛いと感じたのに、下の奥歯が原因だったりと、自分では痛みの原因歯を特定することが難しいことも特徴です。
虫歯の痛み・虫歯と間違えやすい歯の痛み……知覚過敏・歯周病・歯周炎など
実際に良く見かけるケースを紹介します。■知覚過敏
露出した象牙質などに冷たい水などが触れた際に、一瞬痛みが走ることがあります。これは温度が原因で、刺激が閾値を超えたために起こる歯の痛みです。この場合、虫歯のように細菌感染しているわけではありません。
■進行した歯周病
重度な歯周病では、虫歯が全くない歯でも、歯ぐきが下がり歯の根の露出が増えるため、少しの刺激で歯が痛むことがあります。またグラグラ揺れるため、噛むと進行した虫歯と同じように痛くなることがあります。
■根先性歯周炎
虫歯が原因で起こることもありますが、以前歯の神経を抜いた歯が、数年後に根の先端に炎症を起こすことがあります。噛むと痛んだり、あごの骨に鈍い痛みが起こることがあります。
■咬耗(こうもう)
歯の摩耗が進行すると、エナメル質が削れ象牙質が一部露出することがあります。食事をすると露出した象牙質が相手側の歯によって刺激され、ピリッっと痛みが走ります。
■食片圧入(しょくへんあつにゅう)
いわゆる歯の間にものが挟まった状態です。食事でさらに新たな食べかすが押し込まれるため、噛むたびに痛みが走ります。しかしこまめに取り除けない場合には、すでに本当の虫歯になっていることが多いようです。
虫歯でないのに痛みがある場合、神経を抜く治療をするかは慎重に
歯の痛みを取るためには、最終的には、歯の内部の神経を抜けば止まります。しかし歯の神経を抜くと、歯の変色や劣化などがおきやすくなり、歯の寿命が短くなる傾向となります。そのため、歯科医院でもできるだけ神経を抜くことを避けます。診断の結果、虫歯がないことが確認できれば、そのまま経過を見てみるのも一つの手です。知覚過敏などは、噛み合わせの調整などをすると落ち着くことも多く、また数年経過することで、自己補修が行われて、いつの間にか気にならなくなっていることも多いからです。
逆に今すぐこの痛みをなんとかしたいと思うのであれば、ある程度の経過観察の後、神経を抜くような方向で考えることをオススメします。
歯の神経の役割や、神経の抜き方については、「歯科医が解説!歯の神経を抜くとどうなるのか」をあわせてご覧下さい。