ザッハトルテ
ウィーン菓子の王道。お店で注文するとやわらかな生クリームが添えられて出てきます。ウィーンでも、アプリコットジャムを表面だけに塗っているお店と、横半分にカットして間にも塗っているお店がありますが、ノイエスのものは間にもアプリコットジャムがサンドされています。見た目はかなりどっしりしたチョコレートに見えますが、生地はしっとりして、想像以上に軽いと驚くはず。表面を覆うのは、シャリシャリした砂糖の結晶を含むグラズィールと呼ばれる特殊なチョコレートコーティング。甘さはしっかりありますが、濃いブラックのコーヒーと合わせると、じんわりと口の中に旨味が広がります。そこに生クリームが加わると、まろやかさが香りと甘さとをふわっとやさしく包んでくれます。
時間をかけていただきたいケーキ。本場のウィーンのカフェでゆったりしているような気分が味わえますよ。
モーツアルト・トルテ
音楽好きの方は思わず気になる、大作曲家の名前が冠せられたこのケーキ。ウィーンでもお店によって様々なスタイルがありますが、ピスタチオとチョコレートを組み合わせるのが基本で、あざやかなグリーンが目を引きます。もともと、1890年頃にオーストリア・ザルツブルクで生まれた「モーツアルトクーゲル」というピスタチオを使ったチョコレートがあり、それをケーキ仕立てにしたものとして知られるようになりました。古い文献をもとに再現したというクラッシックなモーツアルト・トルテは、ピスタチオと相性抜群のグリオットチェリーも中に入っていて、ピスタチオのコクとチェリーの甘酸っぱさ、チョコレートの生地とのバランスがよく、品のよい一品。表面を飾る細いコルネ描きのデコレーションも美しいですね。
実は野澤シェフ、幼いころからピアノを学んでいらしたことがきっかけで、ウィーン文化やお菓子に興味を持つようになったという大の音楽好き。そんな野澤シェフらしいスペシャリテ、ぜひ召し上がってほしい一品です。
カーディナル・シュニッテン
上下の生地は、黄色い卵黄ベースの生地と白い卵白ベースの生地がストライプ模様になっていて、間にコーヒークリームを挟んだ、ちょっと珍しいスタイルのケーキ。これも伝統的なウィーン菓子の一つです。カーディナルとは、キリスト教のカトリックで「枢機卿」と呼ばれる聖職者の職位。その法衣の色が白、黄色、赤であるのにちなんでいると言われます。2色の生地は卵の風味がしっかりしてふわっとした食感。コーヒークリームも口どけやさしく、これはやはり、コーヒーと合わせていただくと相性抜群です。ちなみに、ウィーン菓子で「トルテ」というと丸く作られたホール状のケーキか、それを切り分けた状態。「シュニッテン」というと、四角く作ったケーキか、それを切り分けたものを指します。このケーキは棹状に作り、パウンドケーキのようにスライスしているので、シュニッテンとなります。
バウムクーヘン
焼き菓子も美味しいノイエスのバウムクーヘンは、直径7.5cmほどの小ぶりサイズ。袋の封を開けると、まるでバナナのような甘い香りがふわっと漂います。ラム酒がほのかに感じられ、しっとりした口当たりのやさしい味わいです。カットサイズもありますが、ホールでも手頃なサイズなので、かわいいギフトになりますよ。シュトーレン
クリスマス時期には、シュトーレンがお薦めです。シュトーレンはドイツの伝統菓子ですが、ノイエスでは、マジパンを生地に完全に練り込んだタイプのものを作っています。ややパンを思わせるサクっと歯切れの軽い生地で、思わず何切れも進みます。嬉しいのは、2、3切れ分程度の超ミニサイズも出されていること。お試しサイズとしていいですよね。また、私が伺った日は売り切れでしたが、「アプフェルシュトゥルーデル」という、極薄のパイのような生地でりんごを巻いてパリッと焼き上げたウィーンの伝統的な焼き菓子もお薦めです。季節で中身が変わり、春には苺、初夏にはさくらんぼや杏などを使ったシュトゥルーデルが登場するのも楽しみです。野菜を巻いた珍しいシュトゥルーデルも、ランチやディナーメニューとしていただけます。
シュトゥルーデルの生地は、向こう側が透けて見えるくらい薄く延ばすのですが、野澤シェフは、通常は作業台の上に布を敷いてその上で延ばすところを、台から持ち上げ、両手両肘を使ってリズムよく美しく延ばされます。ウィーンで働いたお店でも一目置かれたという見事な技。お店は、厨房の中の様子も見えるようになっているので、その様子を見ることができたら、ラッキーですよ!
今回は、お菓子の紹介中心となりましたが、野澤シェフは料理も得意なので、ランチ&ディナーもかなりお薦めです。特にチェックしてほしいのはディナー限定メニューで、牛肉のカツレツ「ウィナーシュニッツエル」に、きのこクリームと、「スパッツエル」というショートパスタを添えたウィーンの伝統料理。
テイクアウト可能な手頃な軽食として、ウィーンの伝統的なパン「ブレッツエル」や「カイザーゼンメル」を使ったサンドイッチも並び、中身の具材も凝っています。
お料理からデザート、コーヒー、ワインに至るまで、本場ウィーンの味を満喫できる「ノイエス」。様々な機会に利用できそうですね。
<ショップデータ>
※2016年6月、移転準備に伴い閉店
■ノイエス
住所:東京都港区赤坂7-5-56 ドイツ文化会館OAG-Haus1階
電話:03-3560-9860
営業時間:8時~23時(ラストオーダー22時)
定休日:不定休、要確認
地図:Yahoo!地図情報