アルコール依存症は生活環境の激変時に気をつけたい、心の病気の一つ。気持ちが落ち込みがちな人は、悪循環の罠には気をつけて!
ところで、チリ落盤事故は覚えていらっしゃいますか? 世界中の人が注目した大事件でした。事後談で、無事、地上へ生還されたにも関わらず、落盤事故の後遺症として、アルコール依存症に苦しむ人がいた事をニュースで見聞きしたかもしれません。
今年は、自然災害の恐ろしさが身にしみた一年でもありました。大きな自然災害は、心の病気の原点になる事があり、アルコール依存症もその一つ。今回は、アルコール依存症のリスクについて詳しく解説します。
まず、アルコール依存症は病気である事を知っておいて!
少量の飲酒は、心の緊張を取るだけでなく、心血管系にも良いという説もあり、一概に飲酒を敵視できません。実際、多くの方はアルコール依存症とは無縁で、上手に飲酒していますが、少数の人は飲酒量のコントロールに問題が生じてしまい、朝から一杯やらざるを得ないほど、アルコール無しでは生活が回らない事があります。これがアルコール依存症です。上手に飲酒している方から見れば、あたかも酒におぼれているかのように見えてしまい、「意思が弱い」「だらしがない」と、ネガティブな印象を抱くかもしれませんが、これは大きな誤解です。実は、本人の脳内環境が変化してしまった為、もはや自分の意思で飲酒をコントロールできません。アルコール依存症は、アルコールを断つ為に治療が必要な、深刻な病気である事を是非、認識しておいてください。
アルコール依存症のリスクは、実は遺伝的要因が最重要! でも、それだけでは……
アルコール依存症は、多くの心の病気と同様、複数の要因が複合的に関与して発症します。発症要因の中で、もっとも重要なものは、実は遺伝的要因。遺伝的要因はDNAレベルで定まる生物学的要因で、簡単に言えば、アルコールへの依存を生じやすい脳内環境は、ある程度、DNAレベルで定まっています。遺伝的要因の有無を調べる研究方法の代表的なものとして、遺伝子が全く同じ双子が、別々の家庭で育てられている状況での、統計調査があります。その種の調査報告はどれも、アルコール依存症の遺伝的要因の重要性を示唆するものです。遺伝子が全く同じ双子の一人にアルコール依存症が見られる場合、別々の生活環境下で暮らしている、双子のもう一人にもアルコール依存症が高率に見られます。
もっとも、双子のもう一人が全員、アルコール依存症を発症する事が無い事からも、アルコール依存症は必ずしも遺伝的要因だけで発症するのではなく、社会環境的要因、心理的要因も重要な事が分かります。
気持ちが落ち込みがちな人は、悪循環の罠には気をつけて!
飲酒が不可欠な生活環境であるか否か、そして飲酒開始年齢もアルコール依存症の発症リスクになります。特に、脳の発達が未完了な10代での飲酒開始は、脳内環境への悪影響が成人より強くなりやすく、アルコール依存症のリスクが高まります。また、生活環境のストレスなど心理的要因もアルコール依存症の発症に深く関わっています。特に、東日本大震災後のように、生活環境の激変時には、心のケアをしっかり意識していきたいものです。もしも飲酒が、気分の落ち込みを和らげる手段になっている場合はアルコール依存症に要注意! 少量の飲酒は心の緊張を取りますが、その効果は一時的。飲酒量が増えれば、かえってイライラは増し、抑うつ症状は悪化していきます。それで、再び飲酒が必要になる悪循環に陥りやすくなるからです。
ところで、先の見通しが、なかなかつきにくい、今日のような厳しい時代では、日常生活上、突発的に厄介な問題が生じる事があると思います。そうした折、もしも悪循環の罠にはまれば、飲酒をされる方は誰もが、アルコール依存症を発症する可能性はあると思います。抱えている問題は時に解決困難に思える事があるもの。でも、心の問題を自分一人で抱え込むのは、心の健康にNGである事は知っておきましょう! その問題が実態以上に大きく見え、心の苦しみが増してしまいます。大切な心のケアは、話す事で心のガス抜きをしておく事! つまり、愚痴をこぼせる機会は逃さない事ですが、その際は……是非、お酒抜きで、お願いします。