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歯科医が悩む!最も困った虫歯「根面齲蝕」とは?

「根面齲蝕(こんめんうしょく)」とは、歯ぐきが下がった根の部分(歯根)に出来る虫歯のこと。どうして根面齲蝕が困った虫歯なのか? 分かりやすく説明します。

丸山 和弘

執筆者:丸山 和弘

歯科医 / 歯の健康ガイド

普通の虫歯はエナメル質から始まる

歯冠

歯ぐき下がると、治療しにくい虫歯が出てくることがある。

普通の虫歯は、歯の表面に付着したプラークから虫歯菌が酸を出し、最初に歯の白い部分(歯冠)のエナメル質を溶かして穴を開け、そこから穴が内部の象牙質に拡がっていきます。

プラークが付着したエナメル質は、食事をするたびに少しずつ溶けています。しかし唾液の成分がこれを修復します。このサイクルを繰り返していますが、修復には数時間かかるため、ダラダラと間食を続けると虫歯になりやすくなります。

普通の虫歯は、エナメル質に穴を開けたとしても、すぐに神経に達するのではなく、歯冠部分は象牙質の厚み(3~6mm程度)も十分あるため、象牙質を溶かして神経部分に炎症を起こすためには、かなり時間が必要となります。

水がしみるようになったりときどき疼いたりと、よくある虫歯の自覚症状が起こる状態は、この象牙質に虫歯が侵入している期間に起こることがほとんどです。この間に虫歯を治療すれば、神経は保存することが可能です。

困った虫歯は象牙質から始まる

歯ぐきが下がるとエナメル質(歯冠部分)の下の象牙質が露出してきます。いわゆる歯が伸びてきた状態です。この露出部分にプラークが付着し続けたり、唾液が減少して、歯の修復機能が遅れ気味になると、歯根部分が虫歯になります。

エナメル質より柔らかい象牙質(根面)から虫歯の侵入が始まるわけです。この露出した根の部分は、エナメル質がある歯冠部分と違い、歯の神経との距離が近い(2mm程度)ため、比較的早い段階で神経にダメージを与えることがあります。

治療は一般の虫歯と同じ方法ですが、難易度が全く異なります。根面齲蝕は、根の周囲を帯状に虫歯が拡がることもあるので、歯冠部分が健康でも根の周囲をぐるっと削って治療することになります。最悪の場合、虫歯のない健康なエナメル質の白い歯冠部が、ポロリと取れてしまうこともあるのです。

50代以上は要注意の多発性根面齲蝕

これらが多発した状態の根面齲蝕は、主に高齢者(早い人は50代でも)の歯周病患者に多く見られます。歯磨きがきちんと行なわれていない、歯周病が進行して根が露出、唾液分泌が減少し虫歯への抵抗性が低下するなどして、歯ぐきから露出した根の部分に、場合によっては数本~数十本に渡って根面齲蝕が現れます。

歯に被せもののがあっても、その下の根が露出していれば、被せものの根元に根面齲蝕を起こします。歯と歯の間が連続して虫歯になることも多いです。特に奥歯の歯と歯の間に出来た根面齲蝕を治療するには、器具が横から挿入しにくいため、歯冠部分から削ることになり、虫歯が小さくても削る量は多めになりがちです。

予防としては、普通の虫歯予防と同じです。高齢になり唾液が減少するなどした場合は、分泌を増やすというより、原因のプラークの量を出来るだけ減らすといった方向が基本となります。そのためには、デンタルフロスや歯間ブラシなどを上手に利用することも重要です。

根面齲蝕は、早く発見できれば、小さく削って詰めるだけで済むことも多いので、定期検診などでの早期発見を心がけることをオススメします。

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