断面が見られることの意味
胸部レントゲン検査では前後関係がつかみづらいのが難点です。
CTやMRIの画像については、「断層撮影」という言葉や「断面の写真」のイメージでなんとなく理解されている方も多いと思います。では、その意味は何かというと、平面から立体へという変化になります。例えばレントゲンでは正面から撮影した写真では前後の関係なく、投影された影のように映ります。そこで、例えば胸部レントゲンでも正面と側面を撮影し、それらの情報を頭の中に組み立てて行くことで理解していました。しかし、CTやMRIではそのようなことは必要なく、あらかじめ断面となって表示されるのでそれだけ正確に判断できるようになります。簡単に言えば、情報量が増すのでそれだけ理解しやすい、判定しやすいということになります。
CTとMRIの違い
CTとMRIの違いは、疾病の種類、現在の状態、治療方針などによって 多少のばらつきはありますが、基本的にはこのような書き方が良いと 思います。
CTとMRIの違いは大きく分けて2つあります。
まず、CTでは放射線を用いるのに対し、MRIでは磁気を用いるという違いです。また、身体の横の断面はCTでもMRIでも見えますが、縦の断面は基本的にMRIでしか見ることができません。
これらの違いが結果的に、CT、MRIの検査に適した臓器、疾患があるということにつながります。
例えば、呼吸器や消化器、泌尿・生殖器系の臓器であれば、CTの横断面が診断や治療の際にも有効です。また、臓器そのものや腫瘍の大きさや進展を見るさいにもCTは威力を発揮します。
その一方で、MRIは脳や神経の描出についてはCTよりも情報が多く得られるケースが多いです。加齢と共に程度の差はあれ誰しも生じる小さな脳梗塞(楽な梗塞)や小さな脳動脈瘤も脳ドックで発見されますが、これらもMRIによって診断されます。また、縦の断面がとれるので、例えば椎間板ヘルニアのような神経・骨の異常を立体的に診断するのにもMRIは適しています。
もっとも、これらの適用は一般的なもので、CT,MRIをともに施行する例もありますし、MRIは心臓ペースメーカーなどの金属が体内に入っている場合には検査ができないケースもありますので、患者さんの病状、検査の目的によって医師は適切に使い分けています。
技術の進歩が医療の現場に
CTやMRIではPCの処理能力の進歩の恩恵を受けることができます。
CTもMRIも得られた情報をコンピューターで情報処理して画像を作っています。臨床応用されて30年以上が経つ検査ですが、この間コンピューターの性能は飛躍的に進歩しているのは私たちが日常生活でも実感することです。
コンピューターの性能がアップするということは、それだけ情報処理能力が上がるということであり、それに応じて、より精細で緻密な画像が描出できたり、情報処理をすすめると擬似的な三次元画像を作ったりということが可能になってきています。
神戸大学の杉本真樹特命講師のグループでは、画像データをもとに立体模型を構築し、実際に手で触れるようにという研究が実用段階を迎えつつあります。科学技術の進歩が医療の進歩につながり、患者さんの治療に役立つ。そんな時代はすでに到来していると言えますね。