子供の病気/その他の子供に多い病気

クローン病の症状・検査・治療・予後について(2ページ目)

下痢と腹痛が続く場合は、腸の慢性疾患の可能性があります。10歳頃から考える腸の慢性疾患として、炎症性腸疾患があり、代表的な病気がクローン病と潰瘍性大腸炎です。今回は、クローン病について説明したいと思います。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド


クローン病の検査

内視鏡検査または消化管X線造影を行います。内視鏡検査は、腸の中の状態を見るために、内視鏡を肛門から入れて大腸を検査します。クローン病だと、腸に潰瘍、石を敷き詰めたような腸の状態(敷石像)があります。その部分の腸の組織を一部とって顕微鏡で炎症の程度などを検査します。内視鏡は、食道、胃、十二指腸、大腸を検査できますが、それ以外の小腸は、消化管X線造影検査で検査を行います。消化管X線造影検査は、消化管すべてを検査することができますが、時間がかかってしまいます。最近は、内視鏡カプセルを使って、腸の状態を見ることができます。

血液検査を行うことがありますが、クローン病特有の検査項目はありません。CRPという炎症反応をみたり、ASCA(anti-saccharomyces cerevisiae antibody)が60%陽性になりますので、参考になります。

クローン病の治療

■食事療法
腸への負担を少なくすることが大切で、食事によっては腹痛や下痢がひどくなります。主に、低脂肪で消化のよい食事を行います。普通の食事が難しい時には、アミノ酸を中心にした栄養剤やタンパク質と脂肪を少し含む消化が一部できている半消化状態の栄養剤が使われます。味はあまり良いとは言えませんが、腸への負担は減ります。腸を休めるために、点滴で栄養を入れる完全中心静脈栄養を行うことがあります。

■内科治療
炎症を抑える薬が中心になります。5-アミノサリチル酸製薬、副腎皮質ステロイドなどの炎症を抑える薬、6-MPやアザチオプリンなどの免疫を調節する薬が使われます。治療中は、感染症には注意が必要です。このような薬でもなかなか炎症を抑えられないこともあり、また、悪化した時には、炎症を起こす物質(TNF-α、IL-12、IFN-γ)を抑える薬が今後使われていきます。炎症を起こす白血球を除く、血球成分除去療法が行われることもあります。これらの治療でも完治は難しく、できるだけ症状を抑えるのが大切になります。

■外科的治療
炎症を起こしてしまい、腸管の内腔が狭くなる狭窄、腸管に穴が開く穿孔、膿が溜まってしまう膿瘍などが起こり、内科治療で困難になった時には外科的に炎症のある部分を除くことになります。しかし、腸を多く取ってしまうと、栄養を取ることができなくなるので、できるだけ腸を残して切除しますが、残った腸管に炎症が起こってしまいます。

クローン病の予後

基本的に慢性の経過になります。治ったと見えても再燃・再発を繰り返します。完全に治ることが難しいので、できるだけ、症状のない状態をいかに長く維持するかが目標になります。やむをえなく、手術になってしまうのは、発症後5年で3人に1人、10年で3人に2人以上になってしまいます。そのために、どれだけ、内科治療と食事療法でいい状態を保つことが大切です。
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