はじめに
捻挫、肉離れは医学用語では靭帯損傷、筋断裂のこと。スポーツ、日常生活上の外傷、交通事故などで発生します。それぞれの症状、診断、治療について解説します。
捻挫の症状
捻挫は関節の靭帯が損傷する外傷。症状として、痛み、腫脹、皮膚の変色、時に受傷時の音、関節の不安定性がみられます。足関節捻挫 腫脹 皮膚の変色がみられます
捻挫の診断
■単純X線(レントゲン)
単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明をうけられるので、整形外科では必ず施行します。
足関節正面像 重度の捻挫
通常の捻挫だけなら単純X線では異常を認めません。重度の捻挫で関節の不安定性があると異常が出現します。ストレステストといい、外力を加えると関節の不安定性が出現することがあります。この場合ストレスをかけたケガの部位のレントゲンとケガをしていない反対側のレントゲンと比較します。
■MRI
MRIは磁気を使用して人体の断面写真を作成する医療用機器です。被爆がないのが最大の特徴です。欠点は費用が約1万円程度と高額な点、狭い部屋に15分 間ほど閉じ込められて、騒音が強いことです。脳外科の術後で体内に金属が残っている人、心臓ペースメーカー装着の人、閉所恐怖症の人などではMRI検査が 無理なため、CTで検査を行います。CTは費用は5,000円程度と安くなりますが、被爆があります。
MRIにより関節の靭帯を画像にすることが可能です。
捻挫の治療
一般に捻挫に対しては安静rest、冷却ice、圧迫compression、患肢挙上elevationのRICE治療が行われます。■安静
関節を包帯、シーネ、ギプスなどで固定し、安静を保つことで靭帯の治癒を促進します。
■鎮痛薬
必要に応じて鎮痛薬を使用します。
ボルタレン、ロキソニンなど非ステロイド消炎鎮痛薬( NSAIDと省略されます )。
ボルタレン 1錠15.3円で1日3回食後に服用。副作用は胃部不快感、浮腫、発疹、ショック、消化管潰瘍、再生不良性貧血、皮膚粘膜眼症候群、急性腎不 全、ネフローゼ、重症喘息発作(アスピリン喘息)、間質性肺炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、無菌性髄膜炎、肝障害、ライ症候群など重症な脳障害、横紋筋融 解症、脳血管障害胃炎。
ロキソニン 1錠 22.3円で1日3回食後に服用、副作用はボルタレンと同様。
どちらの薬でも胃潰瘍を合併することがありますので、胃薬、抗潰瘍薬などと一緒に処方されます。5年間、10年間の長期服用で腎機能低下などの副作用があ りますので、注意が必要。稀に血液透析が必要となる場合もあるので、漫然と長期投与を受けることはできる限り避けて下さい。
鎮痛薬の問題点は数ヶ月以上の服薬で胃腸症状、腎機能低下が高率に発生しますので、急性期を過ぎたら主治医と相談し、減量ないし休薬を考えましょう。
■リハビリ
固定期間に応じた機能障害に対してリハビリを速やかに行います。
靭帯が完全に断裂して固定を行っても関節が安定しない場合手術が必要となります。
肉離れの症状
肉離れは筋肉が過剰に進展して生じる筋繊維の断裂。症状として、痛み、腫脹、皮膚の変色がみられます。
肉離れでは 筋繊維が断裂します
肉離れの診断
■単純X線(レントゲン)
レントゲンでは異常は認められません。
■MRI
MRIにより筋繊維を画像にすることが可能です。
大腿前面のMRI像 断裂した筋肉の診断が可能です
肉離れの治療
肉離れに対しても安静rest、冷却ice、圧迫compression、患肢挙上elevationのRICE治療が行われます。鎮痛薬、包帯、シーネ、ギプスなどの処置は同じです。
■リハビリ
固定期間に応じた機能障害に対してリハビリを速やかに行います。
■手術
断裂が高度で回復が期待できない場合手術が施行されます。