怪我・外傷

気胸の症状・診断・治療

気胸は原因なく発生する自然気胸と肺炎、肺がんなどに続発する気胸があります。症状が強い場合、治療は入院して胸腔ドレーンを留置します。自然気胸の原因であるブラに手術適応があれば、胸腔鏡下切除が行われます。予後は良好ですが、再発リスクがあります。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

気胸とは

気胸とは左右に2枚ある胸膜に何らかの原因で穴が開き、肺と胸壁の間のスペースである胸腔の陰圧が小さくなり、肺が縮むことで呼吸困難が生じる病気。1つの胸膜は1枚の膜ですが、便宜上胸壁に面している壁側胸膜と肺に接している臓側胸膜に分類します。

壁側胸膜は外傷などで穴が発生することが多いです。高カロリー輸液の点滴ラインの穿刺で発生することもあります。
胸膜

胸壁の小さな穴が原因で胸膜に穴が発生しました。


胸腔内圧は呼気と吸気で異なりますが -5cmH2O程度の陰圧です。呼気時に肺は縮小し、吸気時に陰圧が大きくなることで肺は拡張します。胸膜に穴があくと、胸腔内圧はゼロになり、肺は縮小したままで吸気時に拡張することができません。

次に自然気胸と呼ばれる病気では、若い男性に多くケガなどの原因はなく突然呼吸困難が発症します。

自然気胸の原因として肺嚢胞(ブラ)があります。なんらかの原因で肺の組織の一部が空洞になった状態が肺嚢胞(ブラ)です。ブラが安定した状態では病気は発生しません。
ブラ

肺の一部の組織が肺嚢胞ブラと呼ばれる空洞になっている状態。

ブラ

ブラの中身は空気ですので簡単に拡張します。

拡張したブラが破裂した場合、臓側胸膜に穴が開き、気胸が発生します。これが自然気胸の原因です。
ブラの破裂で開いた臓側胸膜に気管支を通じて空気が入り込み、胸腔内圧がゼロになります。すると肺は拡張することができないので気胸が発生します。

気胸の年齢、性差

自然気胸の場合、若年男性の痩せた体型の人によく見られます。自然気胸以外では、肺炎、肺化膿症、肺結核、肺がん、COPDなどが原因で発生しますので、高齢者、男性に多くみられます。

気胸の症状

突然発症する呼吸困難です。咳が引き金で発症することもあります。胸痛、頻脈などを合併することもあります。

気胸の診断

■胸部X線
気胸を考える場合、通常行われる検査です。

胸部X線。

胸部単純X線正面像。縮小した右肺がわかります。


■CT
合併したブラの診断が可能です。

CT

胸部CT像。右肺上部に空洞を認めた。


緊張性気胸

気胸では胸腔内圧は通常ゼロですが、胸膜の穴が弁状になり一方的に空気が胸腔内に充填した状態となることがあります。この状態を緊張性気胸と呼びます。障害された胸腔の内圧は陽圧(内部の圧力が外気圧よりも高い状態)となります。心臓・肺が圧迫され、血圧低下、ショックを合併します。迅速な救命処置が必要です。

胸部

胸部X線正面像。左の胸腔が極端に拡張し、心臓が圧迫された状態。


気胸の治療法

ごく一部の、小さな穴が原因の気胸で、肺の縮小が軽度の場合は保存的な治療を行います。安静にし、鎮痛薬を服用します。

■胸腔ドレーン
気胸になった肺の同じ胸腔に、局所麻酔下にシリコン製のチューブを入れ、機械装置とつなぎ胸腔内圧に陰圧(内部の圧力が外気圧よりも低い状態)を保ちます。入院が必要です。治療期間は2週間ほどで、胸膜の穴が塞がり、レントゲンで肺の縮小が消失すれば治癒となります。

胸腔ドレーン

胸腔ドレーン留置後の胸部X線正面像。萎縮した肺が拡張しました。


■内視鏡下ブラ切除術
自然気胸で、原因となるブラがある場合、胸腔鏡と呼ばれる内視鏡を使用しブラを切除する手術が可能です。全身麻酔と入院が必要です。

ブラ切除

胸腔鏡下にブラを切除します。


気胸の予後

気胸の予後は比較的良好です。自然気胸で再発を繰り返す場合、ブラの有無を精査し、必要があれば内視鏡下に切除する必要があります。この治療で気胸が完治します。


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