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F1ドライバー達が日本に愛を込めた週末(3ページ目)

F1日本グランプリが三重県・鈴鹿サーキットで開催された。秋晴れの晴天に恵まれ続けたレースウィークになり、鈴鹿でF1が再開されて以来初めて決勝レースの観客動員が10万人を超える大盛況の日本グランプリをレポートします。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

光輝いたアロンソ、抜群安定のバトン

今年のF1はKERS、DRSを多用し、ピット回数もこれまでに比べて多くなり、非常に忙しいレースになっている。そんな中で、5人居るワールドチャンピオンは本当に王者らしい走りを見せてくれた。特に特筆すべきは決勝レースで2位になり、一時バトンにかなり接近したフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)である。今年も明らかに劣勢のマシンに乗りながら、イギリスGPで優勝。レッドブル、マクラーレン以外で優勝を飾っている唯一のドライバーである事はもちろん、一度も表彰台にあがっていないチームメイトのフェリペ・マッサとの差は歴然としている。日本グランプリの決勝レースでも常にハイペースのラップタイムを連発し、ベッテルの前でチェッカーを受けるという攻めまくったレースが印象的だった。

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左から2位のアロンソ、優勝のバトン、3位のベッテル 【MOBILITYLAND】



そして、第二の母国で初優勝を飾ったバトンだ。定評のあるタイヤマネージメント能力の高さをタイヤに厳しいレースと言われた今年の日本グランプリでいかんなく発揮し、ベッテル、アロンソの追撃をかわした。コース上のバトルこそ無かったものの、バトンのベストレースの一つに数えても良いくらいの素晴らしい走りだったではなかろうか。マクラーレンとの複数年の契約延長を発表。5人居るチャンピオンの中で最も影が薄い印象のあったバトンの輝きが一層増してきたことを印象づけた鈴鹿の勝利だった。彼が再びワールドチャンピオンに輝く日はきっと来るだろう。


驚異的な鈴鹿ルーキー達の成長ぶり

鈴鹿サーキットはF1カレンダーの中で最もテクニカルでチャレンジングな難コースと言われる。ドライバー達は口々に鈴鹿はスペシャルなコースと語り、多くのドライバーがベルギーのスパ・フランコルシャンと天秤にかけてベストコースに名前を挙げるコースだ。

テクニカルな上、F1カレンダーの中でもイタリアのモンツァに次いで1周の平均速度が高く、なおかつ起伏に富んだ鈴鹿サーキット。このコースで才能を見せつけたドライバー達は必ずと言っていい程、後に成功を収めている。そんなドライバーズサーキット鈴鹿に今年も多くの新人が参戦した。

特に目立ったのはチームメイトの可夢偉を上回り、8位に入賞したメキシコ人のルーキー、セルジオ・ペレス(ザウバー)だ。メキシコ企業の豊富な資金力をバックに鳴りもの入りでF1へと昇格したが、開幕戦から印象的な走りを見せ、ここ数戦はエースの可夢偉を上回るパフォーマンスを見せている。鈴鹿では初日こそ苦戦している様子だったが、終始落ち着いていて、なおかつ攻めた走りで17番手からスタートし、ポイントを獲得した。初ものづくしのルーキーイヤーで見事なパフォーマンスを見せるペレスの心臓の強さは、鈴鹿の好走でより印象づけられた。フェラーリの育成プログラムにも参加している彼は将来的にアロンソのチームメイトになることが噂されている。

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セルジオ・ペレスにインタビューするガイド 【MOBILITYLAND】


また、ウィリアムズのパストール・マルドナド(ベネズエラ出身)も資金力が強固なドライバーの一人。ペレスに比べると、今年は様々な点で苦しんでいる印象だが、決勝レースでは中段争いでチームメイトのルーベンス・バリチェロを上回る好走を見せていた。他にはフォース・インディアのポール・ディレスタも初の鈴鹿で果敢にトライする姿勢を見せていたし、HRTのダニエル・リチャルドも後方のチームメイトバトルを制した。現在は精巧に再現されたシミュレーターなどで事前に走り込むのが当たり前とはいえ、僅か2日の4時間のフリー走行と予選だけでキッチリと合わせ込んでくる実力を持つ点はさすがF1に乗るドライバー達だ。ルーキーたちにも強く感銘を受けたレースだった。


温かい気持ちが今後の日本GPの後押しに

今年の日本グランプリは観客動員に相当苦戦すると予想されていた。特に日本企業の相次ぐ撤退でお茶の間でのF1の露出はかなり減っているし、震災による不況の影響も大きい。しかし、レースウィークが好天に恵まれると予報されると直前になってチケットが飛ぶように売れたそうだ。最終的には久しぶりに10万人を越える観客動員となり、場内はファンで溢れかえった。

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大観衆が詰めかけた鈴鹿 【MOBILITYLAND】


ファンのテンションも非常に高く、思い思いのメッセージを書いて国際映像に映ったりして、日本が復興に向けて歩んでいることを世界に向けて印象づけられた事は非常に大きい。また、レースの円滑な運営を支えるオフィシャル達に対する評価も高く、レース前のコースチェックの際にはオフィシャルの明るいパフォーマンスを役員たちが撮影するなどしていたという。その模様はFIAの表彰式で放映されるそうだ。

F1とファン、そしてサーキット全体がひとつになった日本グランプリ。本当に今まで感じた事がない素晴らしいエネルギーに満ちた週末になった気がする。この週末に発信されたメッセージやエネルギーの大きさは絶大なものだ。2013年以降の日本グランプリの継続に向けて、鈴鹿で大きなチカラが生まれたと感じる。日本のモータースポーツファンのパワーは偉大だ。


写真提供:MOBILITYLAND / Y.Nakano

鈴鹿サーキット公式サイト
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